日本電産「満を持しての後継指名」で狙う躍進 日産出身の関社長がCEOに、永守氏は会長に専念
過去、永守氏は後継者選びに苦労してきた。2013年から日本電産入りしたものの2015年に日本電産を去ってルネサスエレクトロニクスの社長に転じた呉文精氏、2018年6月に日本電産の社長に就任したものの関氏の社長就任に伴い副社長となった吉本浩之氏などがその例だ。
いずれも永守氏が求めた経営成績を残せなかったほか、吉本氏の社長就任を機に導入した、役員間で議論しながら経営を進める集団指導体制について「創業以来の最大の間違い」と永守氏は振り返り、最終的にいずれも後継者となれなかった。
日産から日本電産に移籍し、2020年4月に社長COOに就任した関氏について永守氏は、2020年2月の会見で「今回こそは立派な人材が見つかって、気持ちが安らかになった」と評価。だが前例を見れば、実際に永守氏の期待に応えられるかは未知数だった。投資家や業界関係者からこの点に注目が集まっていた。
永守氏は「本来のトップの役割」に専念
関氏は社長就任後に統括した家電や産業用事業で固定費削減などの構造改革を断行。就任前の同事業の営業利益率が約5%だったのに対し、2021年1~3月期には9.8%まで引き上げた。
またEV分野への先行費用が負担となっている車載事業でも成果を出した。コロナ禍の落ち込みで2020年4~6月期は営業赤字に沈んだ同事業を、原価低減や市場シェア拡大などで2020年10~12月期以降は営業利益率7%以上を維持するまでの底上げに成功している。
こうした成果は全社的な収益力の向上にも貢献し、社長就任から1年間の”見極め期間”を経て今回の関氏のCEO昇格が実現し、日本電産の後継者問題に答えを出したといえそうだ。
今後、永守氏は「将来像や事業展開など、本来の経営トップとして(の役割で、会社の)あるべき姿を考える」。一方、関氏はCEOとして経営判断と執行の責任を一体化したスピーディーな運営体制の構築を担っていく。
ただ、関氏がCEOに就任する今回の人事で日本電産の経営方針が大きく変わるかといえばそうではない。
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