日本電産「満を持しての後継指名」で狙う躍進 日産出身の関社長がCEOに、永守氏は会長に専念

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これまでも同社は「ツートップ体制」と称する経営体制を敷いてきた。具体的には、永守氏がM&A戦略など中長期の経営戦略や精密小型モーター分野などを統括し、関氏が車載や家電、産業向けモーターの分野を統括するというものだ。

CEO就任で関氏が統括する事業分野は拡大するが、「毎週、関と2人で話し合うことは続け、フレキシブルに経営する」(永守氏)。加えて「CEOが変わっても、会社ががらりと変わることはない」(同)とも説明した。

永守氏の権限を関氏に一挙に委譲し厳密な役割分担を行うというよりも、あくまで即断即決に最適な体制に移行するのが狙いというわけだ。

スピード経営がEV攻略のカギ

こうした体制を構築することで、とくに成長を加速させたい分野がEV関連だ。日本電産はEVの心臓部といえるトラクションモーター(駆動モーター)に注力している。すでに同社のトラクションモーターを採用した車種の販売台数は累計で約13万台に上る。今後も2025年に年間250万台、2030年に同1000万台という急成長の戦略を描く。

EVは既存の自動車メーカーだけでなく、スマートフォンなど電子機器を手掛けている異業種企業からの参入も期待されている。関氏はEVに参入しようとする異業種企業について、「今引き合いがあるものだと、来年には立ち上げてほしいという(オーダーが来る)」など、既存の自動車業界に比べケタ違いに短い時間軸を要求される点を指摘する。

EV関連については、すでに日本電産にも「異業種から声掛けがきている」(関氏)。そのほか、同社自体がiPhoneなどの受託製造を行う台湾の鴻海精密工業が主導するEVプラットフォーム「MIH」に参画するなど、拡販に向け積極的に手を打っている。

動きが速いEV業界でシェアを拡大するためにも、工場建設などの大規模投資を迅速に決定できるようになる必要がある。

長年の懸案だった後継者問題にようやくメドをつけた今、永守氏と関氏が次に問われるのは、目標として掲げる2030年度売上高10兆円への道筋をつけられるかどうかだ。今回の関CEO就任人事がいい決断だったかは、その進捗が明らかにしていくだろう。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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