日本人には理解できない米議事堂襲撃の裏側 なぜ米国の「銃所有」は譲れない権利なのか?
その背景を、全米でベストセラーとなった『ファンタジーランド 狂気と幻想のアメリカ500年史』の著者カート・アンダーセン氏に聞いた。
日本人にはわからない銃社会の背景
津山恵子(以下、津山):日本での銃による“発砲”件数は年間20件前後なのに対し、アメリカでは今年に入ってすでに176人がマス・シューティングで“殺害”されています。でも、本格的な銃規制は実現していません。日本人には、アメリカでこんなに犠牲者がいても、なぜ銃の所持を維持しているのか、理解しかねるのですが。
カート・アンダーセン(以下、アンダーセン):1970年代まで、今日まかり通っている『銃所有はもっとも重要な権利であり、アメリカの自由と個人主義を体現するものだ』というファンタジー(幻想)はほとんどありませんでした。数百年もの間、共和党員の裁判所判事も含めて、誰も人々から銃を取り上げようとしたこともなかった。
1960年代に(J・F・ケネディ元大統領の弟)ボビー・ケネディ上院議員とマーティン・ルーサー・キング牧師が暗殺された際も、銃の保持を規制しようという動きは、共和・民主両党から出ていたんです。
ところが、70〜80年代に右派(注:共和党を中心とした保守派で、レーガン政権が誕生した動き)が台頭しました。その際、過去には共和党内でも、傍流でちょっとおかしいんじゃないかと思っていた極端に銃に執着する人たちが、右派の台頭という政治的動きに乗っかってきて、共和党の保守連合の中心にのし上がったんです。
津山:「人民が武器を持つ権利」を保証したアメリカ合衆国憲法修正第2条の解釈も変わってきました。