日本人には理解できない米議事堂襲撃の裏側 なぜ米国の「銃所有」は譲れない権利なのか?

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アンダーセン:修正第2条は、アメリカに陸軍がなかった独立当時、市民を集めた民兵についての規定でした。カウボーイや入植者がいた合衆国の独立時に、万が一英国軍と再び戦うことがあれば、当時はなかった軍の代わりにあなたも私も誰もが銃を持つことがあるよね、というのが前提でした。

入植者に思いをはせると、家族を守る必要もあったのです。しかも、当時は15秒に1発しか発射できず、1丁に3発しか込められない銃しかなかったのに、現在は1秒に5発発射できる銃ばかりです。

しかし、2000年代の最高裁判所判事は、当時の合衆国憲法がわれわれ1人ひとりが銃を持つ権利を保障している、と解釈したのです。

実は、私は銃は怖くはありません。私の父は、狩猟用の銃を持っていて、父と毎年キジ撃ちに行きました。つまり、スポーツ用です。でも『ファンタジーランド』のためにリサーチをして、狩猟人口が激減しているのにびっくりしました。

「過去数十年で、アメリカ人は狩りへの関心を失った。現在、狩りをしているのはアメリカ人の15パーセントだけであり、1970年代の半分以下にまで減った」

「銃を持つ人の数は減っている。しかし、銃の数は異常に増えている。1970年代には、アメリカ人の約半数が銃を持っていたが、平均すると1人につき1丁だった。現在、銃を持つのはアメリカ人の4分の1ほどに過ぎないが、平均的な銃所有者は3、4丁持っている」
(『ファンタジーランド』下巻280ページより抜粋)

デモには銃を持っていく

アンダーセン:私が子供の頃は、銃は狩猟のためのものでした。でも、今や修正第2条を守りたいというトランプ(前大統領)支持者にとっては、『自由』の象徴なのです。銃を所持すること、持ちたいだけ所持することは自由だと主張する。そしてそれを止めることが今はできていないのです。

クレージーです。黒人奴隷制度が米国に残した人種差別という置き土産もひどいものですが、銃はそれ以上にクレージーです。奴隷制度は欧州にもあったが、銃への執着は、世界でアメリカだけにしかないものなのです。

津山:Gun Violence Archiveによると、アメリカでは2021年に入って、少なくとも1万2417人が銃による暴力で死亡し、このうち6996人が自殺だといいます。私が住むニューヨーク州でもそうですが、鹿やキジを撃つのは、ライフルなどで、軍隊式の半自動式「アサルト・ウェポン(対人殺傷用武器)」ではありません。

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