生活保護を「親族にバラされる」扶養照会の残酷

家族を壊し、「助けて」と言えなくする

冒頭の男性のように家族仲が扶養照会によって破壊されたケースも多数あり、「きょうだいに罵倒され、それ以来、音信不通」「仲がよかった親きょうだいと気まずくなり、疎遠になってしまった」「弟に怒られ、住所も教えてもらえなくなった」など、家族の助け合いを求める扶養照会が家族をバラバラにしている結果に心が痛む。

上記のほかにも「言いふらされた」「恥と言われ、縁を切られた」など、関係が切れるだけでなく、被保護者の尊厳までをもズタズタにするのが扶養照会だ。

生活困窮は罪なのだろうか?

扶養照会さえなければ、この国が好む「家族の絆」は損なわれずに済む場合も多いのだ。しかも、何度も声を大にして言っているが、扶養照会をして実際に援助ができる家族はほとんどおらず、全国平均でも1.45%、都市部では0%という自治体も珍しくない。

何十年も前に別れた娘に、今の自分の姿を知られたくないから生活保護は受けられないと言って、子どものころの娘の写真を大事に財布に入れている路上生活者。

生活保護を申請した老親の扶養照会を受け取り、親を助けられない自分は不甲斐ないと責めてしまう子ども。

扶養照会通知が届いた親族から怒鳴り込まれたり、ビリビリに引き裂かれた用紙を送り返された福祉事務所職員。

そこには、いろいろな立場の人による悲痛な言葉で体験談がつづられていた。

これらの結果を踏まえ、私たち「つくろい東京ファンド」は生活保護問題対策全国会議のメンバーとともに、2月8日に厚労省に運用の見直しを申入れをした。この申入れは多くのメディアが報道し、国会でも連日、議題に上ることになった。

山がジリジリと動き出す

2月26日付けに厚労省から事務連絡が出され、既存のルールに若干の修正が入った。しかし、これはあくまで微修正でしかなかったため、3月17日に2度目となる申入れを行う。このとき持参したインターネット署名は、2月8日の申し入れ時点で3万5806人分だったものが5万7478人分にも増えていた。

厚労省はホームページに、目立つように色のついた囲みをつけて以下のように記してある。

生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください

生活保護が国民の「権利」であるのなら、申請する個人の意思が尊重されずに扶養照会が行われるのはおかしい。私たちはあくまで「被保護者の事前の承諾なしに扶養照会はしない」にこだわり、要望書を提出。生活保護問題対策全国会議の小久保哲郎弁護士が改善案を作成し、申入れ時に提出した。

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