生活保護を「親族にバラされる」扶養照会の残酷 家族を壊し、「助けて」と言えなくする
「ためらわずに相談」をするためには、生活保護をためらわせ、遠ざける扶養照会があっては困るのだ。
2度目の申し入れから2週間足らず、厚生労働省は本年3月30日付で「『生活保護問答集について』の一部改正について」と題する事務連絡を発出した(本年4月1日施行)。
そこには「扶養照会を拒む要保護者の意向の尊重」が盛り込まれていた。
新ルールでは、私たちが要求している「申請者の事前の承諾」までは認められなかったものの、「要保護者が扶養照会を拒んでいる場合等においては、その理由について特に丁寧に聞き取りを行い、照会の対象となる扶養義務者が『扶養義務履行が期待できない者』に該当するか否かという観点から検討を行うべきである」とした。
これは、要保護者の意向を尊重する方向性を明らかにし、要保護者が扶養照会を拒む場合には、「扶養義務履行が期待できない場合」に当たる事情がないかを特に丁寧に聞き取る運用を求めるものだ。
これまでは、生活保護申請者が扶養照会を嫌がると、「決まりだから」「法律だから」などと個人の事情や意向は無視されてきたのだが、今後は「扶養照会をしてほしくない」という申請者の意向を尊重すべきという規定が追加された、これは心が震えるほどに大きな変化だ。
加えて、扶養照会を行うのは、「扶養が期待できる場合」に限ることを生活保護手帳と並び、福祉事務所の職員がバイブルとしている「生活保護手帳別冊問答集」に明記するというのだ。
生活保護手帳には法的拘束力があり、書いてある処理基準を破れば違法。しかし、別冊問答集は保護手帳ほどの法的拘束力はない。がしかし、保護手帳に準拠する参考資料であるため、ここに明記されることの意味は小さくない。
新ルール、福祉事務所の運用に反映されるだろうか?
自力でやれるだけのことはやったが、どうにも生活が困窮してしまったら、ぜひ、生きるために生活保護を申請してもらいたい。そんなときに「扶養照会はしないでほしい」ということはワガママだろうか? 「家族に心配をかけたくない」「家族との縁を切られたくない」「関係の悪い家族に知られたくない」そう思うのは自分勝手だろうか? いや、そんなことがあるわけがない。少しでもそう思う人は、この記事を最初から読み直してほしい。
本年4月1日から個人の意思が尊重されることになった。
この新しい事務連絡は、福祉事務所のまともな職員たちを多いに励ますことだろう。著者自身、生活保護の申請同行をする中で、「扶養照会なんてしたくない。作業は増えるし、切手代もバカにならないし、したところで援助できる人はほとんどいないだけでなく、親族からも申請者からも嫌われる。申請者との信頼関係も築けない」とボヤく職員たちを見てきた。