窮地の三陽商会「大リストラ」の先に描く挽回策 念願の黒字化なるか、物産出身・大江社長を直撃

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おおえ・しんじ/1947年生まれ。1971年京都大学卒業後、三井物産入社。1997年同社本店繊維第三部長などを経て、2007年にゴールドウインの取締役専務執行役員。副社長などを歴任し、同社の経営再建に携わる。2020年3月に三陽商会副社長、同年5月に社長就任(撮影:今井康一)

一定程度は戻るだろうが、消費者の購買行動が構造的に変わった影響は残るだろう。

シニアの百貨店顧客の中には、巣ごもりが続いてEC(ネット通販)などの購買手段に目覚めた人も多い。リモートワークが定着すれば、通勤着やフォーマルウェアの購買が落ちる可能性もある。

――日常的に通勤着を着る人が減れば、中途半端な価格のスーツなどは売れなくなります。

コロナに関係なく、その流れは以前からあった。価値もないのに中途半端な価格で売っていたプレーヤーは淘汰される。だが、値段は高いけど価値がある商品の需要は必ず残る。

市場の二極化が進む中で絶対にわれわれは「真ん中」に商品を落とさない。当社のターゲットは(中価格帯の中でも高級なゾーンに位置する)ミドルアッパー市場。ラグジュアリーブランドと同等の品位と品質を持った商品を、ラグジュアリーほど高くない値段で提供する。

今期はブランディングを事業戦略の中心に位置づけ、各ブランドの定義をもう一度はっきりとさせる。

若い人に迎合するとうまくいかない

大江社長は「(若者にも)オーソドックスで品位の高い商品に対する需要や憧れは必ずある」と断言する(写真:三陽商会)

――希望退職で3月に全社の1割強の社員が退職しました。ブランディングを強化できる有力な人材は残っていますか。

それは残っていますよ。希望退職した180人は販売職や、生産管理に関わる人が多かった。人員が過剰となっている部門の社員が中心だ。(商品企画を担う)人材はきちんと確保できている。

――三陽の顧客は中高年以上が多く、若い世代の取り込みも課題です。

うちが若い人に迎合するようなブランドを作っても、たぶんうまくいかない。得意分野を離れるより、当社の商品が若い人たちにリーチできるような(発信などの)工夫をするべきだ。

ファストファッションやユニクロ、セレクト系の商品だけで若い人のニーズを満たせるわけではない。若者の嗜好は多様だから、オーソドックスで品位の高い商品に対する需要や憧れは必ずある。

――カジュアル化も進む中、高価格帯の衣料品は大きい成長が見込める市場ではありません。2024年度に売上高520億円という中期目標を掲げましたが、コロナ後の市場でそれだけの規模を確保できるのでしょうか?

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