窮地の三陽商会「大リストラ」の先に描く挽回策 念願の黒字化なるか、物産出身・大江社長を直撃

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さまざまな市場分析を照らし合わせると、縮小市場とはいえ、国内のミドルアッパー市場で1000億円程度は当社でも中期的に取り込める余地があるとみている。プレーヤーの数も減っている。そこで取れる島の大きさについて悲観的になることはない。

――話が変わりますが・・・・・・。

(質問をさえぎって)いやだからね、520億円が過大なのか慎重なのかはいろんな見方がある。ただ2019年度の売上高は(14カ月変則決算の実績を12カ月換算した数字で)600億円近くあった。そういう意味では現実的な数字だ。

――会社規模自体は縮小しても、520億円の売上高を出す力はあると。

(リストラで)企業が劣化したわけではなく、逆に機動力は高まった。そんなに戦力ダウンしたという認識はない。「夢を言え」というなら話を膨らますことはできるが、達成できないようなビジョンを語るつもりはない。確実に実行できる計画と考えている。

――ブランディング強化という点では、基幹ブランド「ポール・スチュアート」の国内の商標権を3月に三井物産から取得しました。

物産はこれまで当社を割とクールな姿勢で見ていた。業績不振が続いて、どう会社を立て直すか明確なビジョンが見えなかったから。

それが今は支援するような姿勢に変わった。僕が進めている改革の合理性を認めた、ということだと思う。提携強化の話を進める中、「それ(国内商標権の取得)が三陽の将来の成長につながるのであれば」と話が持ち上がった。

売り上げを目的化するとどこかで失敗する

「年齢的にも僕がずっと社長を長くやるわけにはいかない」と話す大江社長(撮影:今井康一)

――物産は三陽の株式も約9%保有しています(2020年8月末時点)。さらに関係を深める可能性は?

そういう発想は持ってくれている。ただし、まずは当社が計画通り黒字化できるかが試金石になる。実現すれば、もう少し出資してもよいという判断をするかもしれない。銀行も構造改革の方向性を信頼してくれているが、結果を出してなんぼの話だ。

――今期の黒字化は売り上げ次第でもあります。

「売り上げ、売り上げ」って言うけれど、売り上げを目的に経営を行うと、どこかで背伸びして、いろんな失敗につながってしまう。重要なのはブランド価値を高めること。中身を伴った(値引きセールに頼らない)売り上げをどれだけ作れるかが勝負になる。

(経営再建に携わった)ゴールドウインのときも、現場には「売り上げは追うな、中身を追求してくれ」と言った。それを徹底した結果、気がついたら売上高は1000億円になっていた。

――仮に黒字化を果たした先で、大江社長の後に改革を継続できる人材はいるのでしょうか。

商品仕入れや売り場運営のあり方など、僕が植えつけた改革の路線は社内に相当浸透している。ゴールドウインのときよりも現場の定着度は早い。

年齢的にも僕がずっと社長を長くやるわけにはいかない。次世代の経営体制をどうするかは重要なミッションと考えている。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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