登校が辛い子の親に教えたい「休む」という選択 「なぜ行かないの?」とストレートに聞くのはNG

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例えば、「なぜこんなに散らかしたの?」と言われた場合、ほとんどの人は「ごめん、すぐ片づける」と反応するはずだ。つまり「なぜ」は、質問の形を借りながら相手を強く批判する攻撃的なパワーワードともいえる。子どもにとっても「なぜ」と聞かれることは負担に感じるだろう。

親が心がけたいのは、子どもが自分から話せるようにすること。次の①~③の順序で親の気持ちを伝えたうえで、焦らずに待つことを勧めたい。

①子どもが怠けているのではなく、学校に行くことを避けざるをえない理由がある、とわかっていること。
②親として心配しているのは、学校で子どもの安全と健康がおびやかされていないか、という点であること。
③話す気になったらいつでも聞くし、必要なら手助けをしたいこと。

親がなぜ理由を知りたいのか、聞いてどうするつもりなのかがわかれば、子どもも「話してみてもいいかな」と思えることがある。そして子どもが話してくれそうな気配を感じたときは、「秒」で反応を。「いつでも、なんでも聞くよ」という気持ちを態度で示すと、親子のやりとりが徐々にポジティブで活発なものになっていくはずだ。

子どもが何を伝えようとしているのかを知ろう

コロナの影響により自宅で家族と過ごす時間が増え、お互いにぶつかる場面が出てきた人もいるだろう。そのきっかけのひとつが、子どもの攻撃的な言動ではないだろうか。親としてはカチンとくるかもしれないが、子どもの態度をなおそうと注意したり叱ったりするのは逆効果。かえって、お互いに不快なやりとりが増えてしまう。

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子どもの乱暴な言葉や態度は、「かなわなかった希望」があることが関係していることがある。親がするべきなのは、子どもが本当は何を伝えようとしているのか?を知ろうとすることだ。

「バカヤロー!」と言う子どもは、親に「あなたはバカだ」と言いたいわけではない。「ムカつく」と言う子どもが感じているのは、苛立ちだけではない。こうあってほしかったのに実現しなかった、とがっかりさせられる何かがあり、その気持ちをうまく表現できないモヤモヤが攻撃的な言葉に変換されているだけなのだ。

だから、「親に向かってなんてことを!」「ムカつくじゃわからないでしょ」ではなく、「本当はどうしてほしかったの?」と子どもの願いを話題にしてみてはどうだろうか。「どう表現したらよいかわからないこと」を言語化する手助けをすることで、子どもの本心を引き出すことができるかもしれない。

井上 祐紀 精神科医(子どものこころ専門医)

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いのうえ ゆうき / Yuki Inoue

1998年岐阜大学医学部卒業。2011年社会福祉法人日本心身障害児協会島田療育センターはちおうじ(診療科長)。2014年公益財団法人 十愛会 十愛病院(療育相談部長)。2015年社会福祉法人青い鳥横浜市南部地域療育センター(所長)。2019年東京慈恵会医科大学精神医学講座(准教授)などを経て、2021年福島県立矢吹病院(副院長)。著書に『10代から身につけたい ギリギリな自分を助ける方法』(KADOKAWA)など。

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