分断する世界で日本に求められる役割とは何か

大きく変動した日米中めぐる国際秩序の本質

それと表裏一体の関係にあるのが、中国の覇権主義的思考、「覇権」という言葉を使わないとすれば、中国天下思想でもいいかもしれません。要するに中国が国際秩序の中心にある、あってしかるべきだという思考です。中国は国連ファミリーにしても一帯一路沿線国にしても、中国は世界の「多数」から支持を受けているという感覚を抱いており、アメリカをはじめとするいわゆる西側諸国は「少数」であると主張しています。

とはいっても、アメリカ主導のこれまでの国際秩序のすべてを破壊しようと意図しているわけではありません。しかし、これまで国際秩序を主導してきた「少数」の西側の“既得権益層”の論理に対して世界の「多数」の論理が取って代わるべきだ、それを中国が主導するのだという意思をより明瞭に示しつつあります。それも、今までとは大きく違う変化だと思います。

地経学的闘争

もう1つ、この8年の間に世界で起こった変化で見逃せないのが、国際政治のパワーゲームの中で、経済がパワー化する、場合によっては武器化させられる、そうした地経学が大きな役割を占めるようになったことです。

トランプ政権は、中国の地経学的脅威に対して、関税引き上げという対抗措置を繰り返しました。バイデン政権も基本的には同じスタンスで対応すると思われます。つまり、共和党から民主党に政権が代わっても、地経学的な対中姿勢にほとんど変わりはなく、ここでは超党派的な合意に近いものが生まれ始めているということです。

アメリカの世論調査では、67%が中国に好意を抱いていないという数字が出ています。中国による核攻撃の可能性といった軍事的脅威ではなく、むしろ、AI(人工知能)やバイオ、量子コンピューティングをはじめとする第4次産業革命をめぐる技術覇権闘争やサイバー攻撃、軍民融合、社会監視体制、戦略企業に対する巨大な政府補助金、さらにはアジア太平洋における中国の勢力圏拡大などに脅威を感じ始めていることがあると思います。

その象徴の1つが、アメリカ政府の日本を含む第3国に対する中国への半導体の再輸出禁止措置でした。

一方で中国は、半導体禁輸といった、サプライチェーンの急所を突く地経学的脅威に対し、グローバルサプライチェーンを中国にとって信頼できるものに組み換え、世界各国の中国への依存度を高めていく「拉緊」政策を打ち出しています。経済関係相互依存の非対称性、つまり中国に対する相手国のより大きな依存を、地政学的な目的のためにテコとして使い、相手国に対する経済圧力を強めようというわけです。

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