後者は、生活の基盤を支えてくれる労働に関わる人々として「エッセンシャル・ワーカー」などと呼ばれて賞賛の対象になることがあるものの、「身体を動かす労働」の中での競争がきびしく、賞賛のかけ声ほどにはお金になっているわけではない。
また、情報技術の発達は、競争の範囲を拡大することによって、各種の「先生」、広義の「スター」などの職種内の格差を広げる効果も持っている。YouTubeはすでにレッドオーシャン化しているし、例えば今後オンラインでの教育や相談などが拡大すると、「一番いい先生」に人気が集中して、2番目以下の先生との経済格差が拡大することになるだろう。知的だと自分が思っている職業も安泰ではない。
株の力を使って「超ビッグなサラリーマン」に
経済格差の拡大は、それ自体が好ましいことであるようには思えないが、前記のように、もともと必然性があって起こっている。個人は、「世の中に働いている力」を所与の条件としてどう対応するかを考えなければならない。
「お金に背を向けて質素な暮らしを追求する」選択肢も否定はしない。だが、経済的により豊かになることができるのであれば、そのための方法は考えておきたい。
「生産性の高い個人」になる自己改造が簡単ではないとすると、有力な方法は「資本家比率」を上げることだろう。だれもがジェフ・ベゾス氏やテスラのイーロン・マスク氏のようになれる訳ではないが、世界長者番付の中にヒントがある。
注目したいのは、富豪番付第14位のスティーブ・バルマー氏だ。4位のビル・ゲイツ氏(資産約13兆5000億円)には及ばないが、約7兆5000億円の立派な富豪だ。同氏は、マイクロソフト社の前CEOだが、ランキング上位に並ぶ創業経営者にして大株主の富豪たちとは異なり、出自はサラリーマンであり「出世したマネージャー」にすぎない。
ただし、マネージャーとしては有能だったのかもしれないが、同氏のCEO時代にはマイクロソフト社の業績は低迷気味であった。バルマー時代の同社は、検索エンジンにも、スマートフォンにも、クラウドにも、今一つ乗り切れずにいた。しかし、バルマー氏は、長年マイクロソフト社に勤めてストックオプションなどを通じて自社株を蓄えたのだろう。「超ビッグなサラリーマン」として模範的だ。
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