自分の要求を100%通す人の「最強テクニック」 交渉では「自分から条件提示」してはいけない
私たちは、ハイウェイ沿いの巨大な中古車屋に着き、顧客用の駐車エリアに車を止めた後、整然と並んでいる車を見て回りはじめました。そうしているとセールスマンが出てきます。リチャードは、そのセールスマンと笑顔で握手を交わした後、フロントガラスに貼られている紙を指さしながらやりとりを始めます。
セールスマン「9500ドルまでは下げられますよ」
リチャード 「もっと安く、9000ドルになる?」
テキサス流のフレンドリーな雰囲気の会話が続きます。最初の店によさそうな車が何台かありましたが、リチャードは「この車にすれば」と私に勧めることはありません。しばらく時間を費やした後、セールスマンから名刺をもらって次の中古車屋に行き、また同じことを繰り返します。
私は横でリチャードのやりとりを見聞きし、ときに片言の英語で質問などをしているうちに、中古車の価格の相場観や中古車屋の本音での売値が見えるようになってきました。
自分との商談に投資をさせる
その後も何回かリチャードに中古車屋に付き合ってもらいましたが、ある日勇気をもって自分1人で中古車を買いに出かけることにしました。
私は、最初に入った中古車屋で、気に入った車を見つけました。フロントガラスには値段が書いてあります。1万1000ドル。残念ながら私の予算を超えています。セールスマンが出てきたので、リチャードの教えを思い出しながら、低い金額を提示してみました。
「8000ドルにしてほしい」
するとセールスマンは、「それはできない!」と言って、ほかの客のところに行ってしまいました。いきなり交渉失敗です。なぜ失敗したのでしょう。
それは、このセールスマンが私のために時間をほとんど費やしていなかったのが理由だということがあとからわかりました。セールスマンは私との交渉に時間を投資していなかったため、それほど交渉をまとめたいという思いに至らなかったのです。
お客としての私を失っても惜しくない、もっと高い値段で買ってくれそうな客を見つけたほうがよい、と考えたのです。これではうまくいきません。
交渉を有利に運ぶには、セールスマンに私のために時間を使わせなくてはなりません。私との商談に投資をさせなければいけなかったのです。
それに気づいた私は、すぐに次の中古車屋に行きました。そこで見つけた車は、まだ新しい白のGEOプリズム。ゼネラル・モーターズの車でトヨタのカローラと同程度のクラスです。
前の店でいきなり低い価格をぶつけて失敗した私は、今度は、初めに価格の話をしないことにしました。
「走り具合はどうですか?」
「事故はなかったですよね?」
セールスマンは丁寧に答えてくれます。即答できない質問については、オフィスに戻って調べたうえで答えてくれました。
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