3月には第3弾の現金給付が幅広く配布されたことも後押しして、サービス部門の経済活動の正常化が進み、春先から夏場にかけてアメリカ経済は再加速する段階に入るとみられる。
こうした状況を受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長は、4月11日のテレビ番組に出演して、経済状態が「変曲点」(inflection point)にあるとの認識を示した。FRBも、経済活動の再加速が始まったことを、強く認識しているということである。
先に述べたように業績発表をきっかけに、目先は株高が一服するかもしれないが、経済成長加速が企業利益を押し上げるとの期待は、ワクチンが相当行き渡る夏場にかけて高まる可能性が高いと筆者は考えている。
一方、パウエル議長の「変曲点」との発言は、新型コロナ対応で続けてきた強力な金融緩和政策を見直す地ならしを始めた、との解釈もできるだろう。経済状況などの「顕著な一段の進展」が、FRBがテーパリング(資産購入金額の縮小)を開始する条件として示されている。具体的には、経済成長率の大幅な加速と雇用者数の大幅拡大が秋口まで継続すれば、FRBはテーパリング検討を始めるだろう。
なぜテーパリング開始への警戒感が強いのか
バブルとの声が聞かれるアメリカ株市場のリスクとして、FRBのテーパリング開始は相当意識されている。2013年5月のベン・バーナンキ議長時代の、いわゆる「テーパリング騒動」の記憶が新しいことも、市場の警戒感を強めている。金融緩和によって株式市場で「バブルが人為的に作られた」と思い込んでいる市場関係者ほど、テーパリングを強く警戒していると思われる。
ただ、2013年の時にはFRBのテーパリング開始への思惑で長期金利は上昇したが、アメリカの株式市場は高値圏でのレンジ推移に移行しただけで、株安への転換を招いたわけではない。当時もそうであるが、FRBの資産購入の調整が経済活動の復調に応じて適切に行われるのであれば、それは株式市場の大きな混乱を招かない。
パウエル議長率いるFRBも、テーパリングが金融市場に及ぼす影響には配慮するため、市場とのコミュニケーションを慎重に進めると筆者は予想している。
現時点では、パウエル議長などは「資産購入見直しの議論は時期尚早」と述べるにとどめており、テーパリング開始の具体的な基準は明確ではないことが、市場の疑念を高めている。ただ、今後、大幅な雇用増加あるいは感染症リスク緩和を示すワクチン接種率、などの具体的な条件を金融市場に示しながら、2021年末までにFRBの中でじっくりとテーパリング開始を検討していくだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら