パウエル議長などのFRB執行部の政策姿勢は、ハト派のメンバーにより近いことが、3月FOMC(米連邦公開市場委員会)に公表された政策金利見通しから明らかになった。
インフレ目標の上振れを容認する政策姿勢が多くのFOMC参加者で共有されており、このため利上げ開始時期が2024年以降と想定されたままとなっている。FRBが想定している金融引き締めに向かう時間軸の長さを踏まえると、テーパリング開始を急ぐ可能性は低いと見込まれる。当局者そして多くの市場参加者がアメリカ経済の復調に自信を持てるようになるまで、FRBは十分時間をかけてテーパリングに着手する余裕があるということである。
また、テーパリングの早期開始が意識されているのは、インフレ上昇への思惑もあるだろう。半導体など製造業における供給制約によって価格上昇が見られていることで、コロナ禍後にはインフレの世界が到来するとの見方がくすぶっている。
アメリカのコアCPI(消費者物価指数)は6月までの3カ月くらいは、前年比でプラス2%をはっきり超える伸びに上振れると予想されるが、コロナ危機後の反動で指数が上振れる側面が大きい。このため、経済正常化が進んでも、2021年後半以降はインフレ率が2%以下で推移すると、筆者は予想している。このインフレ率の落ち着きが、FRBのテーパリング開始判断を慎重にさせると見込んでいる。
アメリカ経済の成長率は1980年代以来の高い伸びに
そして、FRBのテーパリング判断に際しては、長期金利の動向にも十分配慮するとみられる。前政権に続き、バイデン政権も大規模な財政政策を発動している。そのため2022年前半にかけて、歳出拡大が続くと予想され、国債市場の需給が不安定になり易い局面がしばらく続くだろう。このため、長期金利上昇は今後散発的に起きるとみられ、これもFRBのテーパリング開始を遅らせる要因になるだろう。
金融市場では、2022年早々のテーパリング開始がコンセンサスとなりつつある。2021年にアメリカ経済の成長率は1980年代以来の高い伸びに高まると筆者は想定しているが、これまで挙げた要因を踏まえると、FRBのテーパリング開始は2022年央まで後ずれする可能性が高いと筆者は予想している。
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