松山英樹「マスターズ制覇」はどれほどの快挙か 日本人初挑戦は1936年、延べ132人が参戦

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スポーツ界ではゴルフに限らず、こうした快挙があると、当然ブームになる。最近のゴルフ界では、渋野日向子が2019年に「AIG全英女子オープン」で日本選手42年ぶりの女子メジャー制覇をした際には、渋野が使用したドライバーがその年の売り上げ1位を記録するなど、業界が活性化した。

松山の優勝はそれ以上のインパクトがあるといっていい。コロナ禍で感染リスクが低いゴルフが見直されて、新規ゴルファーが増えている中で、ゴルフ業界にとってさらに「追い風」になることは間違いない。

この追い風をゴルフ業界は生かせるか。コロナ禍で主に中国で行っていた生産の規模が縮小されたため、一部ゴルフ用品メーカーで問題になっているのが、シャフトやグリップの品不足だ。せっかく需要が高まっているのにクラブを売りたくても部品が足りない、という状況は作りたくない。

この風は、マスターズの会場のオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブに吹く風のように、気まぐれだ。松山のように、しっかりと風を捕らえたい。ゴルフは見るだけではなく、何歳からでも自分でプレーできるスポーツ。ゴルフ人口が減ってきている中、右肩下がりから脱却して、再び右肩上がりに転じさせるチャンスをせっかく松山がくれたのだ。

早くも経済効果を算出している向きもあるが、こればかりは推測の域を出ない。松山が今年中にさらにメジャー大会に勝つ可能性が十分あるからだ。なにより、本人も「開催されるなら当然狙いたい」という東京オリンピックで金メダルともなれば、もっと大騒ぎになるだろう。

青木功、尾崎将司、中嶋常幸も感激

プロゴルフ界では、青木功・日本ゴルフツアー機構(JGTO)会長が「私だけでなく、日本全国のゴルフファンや関係者などが待ち望んだ瞬間」とし、「新型コロナウイルスの世界的な拡大によって、国民の皆さんの気持ちが落ち込んでいる状況の中でのマスターズ優勝ということで、本当に多くの方々に希望を与えてくれたと思います。松山選手には祝福と同時に心から感謝いたします」というコメントを発表。テレビ出演の際には「ジーンとして下を向いて寝たふりをしていた」と涙したことを明かした。

尾崎将司は「日本プロゴルフ界の大偉業である。これは松山本人の挑戦力と勇気、そしてそれに必要な努力の結果である。最近の調子からあまり期待をしていなかったが、今週のスイングは今までと違って素晴らしかった。この松山に続く世界で通用する男子プロの出現を切に願う。本当におめでとう!」とコメントしている。

そして、TBSの生中継で解説をしていた中嶋常幸。優勝の瞬間から放送ブースは号泣で、中嶋も「本当によかったあ」と涙声を絞り出した。これで、もらい泣きした視聴者が多かった。表彰式後に松山と直接会話した際には「日本に帰ってきたら(優勝者に与えられるグリーンジャケットに)袖を通させてくれ」とお願いした。

男子プロゴルフ界を牽引してきた「AON(青木、尾崎、中島の略称)」が、これほどまでに松山の優勝に感激したのは「メジャー制覇」が日本プロゴルフ界の悲願であり、AONも何度も挑戦しては跳ね返された経験があるからだ。

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