「年収を偽って婚活」の36歳男性が直面した事態 マッチングアプリで知り合った彼女は…

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愛さんも古いなあ。「だったら自分が頑張って年収を上げればいいじゃん」と甲斐性のない筆者は思ってしまう。でも、悪いのは噓をついた伸之さんのほうだ。「別れてください」と泣く愛さんに平謝りに謝って、がむしゃらな転職活動を開始。現在の会社に入ることができ、年収600万円を達成した。伸之さん、有言実行の男である。

「結婚できて本当によかったです。今の妻と結婚したかったから。幸せです」

相変わらず硬い表情で語る伸之さん。言葉とは裏腹に少しストレスを抱えているようだ。新婚生活がやや窮屈なものになっているのが原因だろう。

「昨年、妻と共同でローンを組んで建売の一戸建てを購入しました。それで価値観がだいぶ変わりましたね。お金のことなどを長期的に考えるようになったんです。子育てや老後のことなども考えると無駄遣いはできません。独身時代は先のことなんてまったく考えていなかったのですが……」

今後、子どもができることを見越してマイホームの間取りは3LDK。しかし、購入して1カ月後にはなぜか愛さんの両親と同居することになった。

「義父ががんを患っていて、東京の病院に通院することになったからです。寝室は別ですし、私のテレワーク用の部屋も確保してあります。それでも風呂やトイレ、リビングは共用なのでストレスはたまります。私は義父母のことが好きですが、ずっと一緒にいると別ですね。終電帰りが多い私に対して、義父から『体に気を付けてね』なんて言われると鬱陶しく感じます。仕事や生活を干渉されたくありません」

時期も悪かった。伸之さんは営業職であり、コロナ禍でも断りにくい会食はある。転職したてなのでなおさらだろう。帰りも毎日遅い。

今後の長い結婚生活の基盤を構築

「妻は基本的に自分の両親の味方です。『親と一緒に住んでくれてありがとう』とは言いつつ、高齢の病人と同居しているのに、と外食している私を責めてきます。仕事なんだよとやんわりと反論しましたが強くは言えません。こっちの分が悪くなるだけだからです」

愛さんはとくに母親と仲がよく、2人で楽しそうに家事をしている。家事が得意ではない伸之さんは「ありがたい」と思いつつ、料理の品数が増えてもうれしくはない。元来、食事は「食べられたらいい」と思う程度でさほど関心はないからだ。

「土日のうちどちらかは妻と2人きりで過ごせています。それが幸せです」

自分に言い聞かせるようにつぶやく伸之さん。新婚早々、さまざまな重圧に耐える日々だ。愛さんとの力関係が「完全に逆転」したのは自業自得だが、考えようによっては今後の長い結婚生活の基盤を築けているとも言える。転職を果たし、持ち家を確保し、義父母と真の「家族」になろうとしているからだ。伸之さんの奮闘を期待したい。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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