映画「ミナリ」地味なのに全米で大ウケの真因 韓国人一家の物語がアメリカ人の心を打つワケ

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ミナリは、第78回ゴールデン・グローブ賞で外国語映画賞を受賞。4月25日(現地時間)に授賞式が開かれるアカデミー賞では、冒頭の通り6部門にノミネートされた。

主演男優賞、助演女優賞にはスティーブン・ユァン(ジェイコブ役)、ユン・ヨジュン(スーンジャ役)がそれぞれノミネートされ、受賞すればそれぞれ韓国系で初となる。

舞台女優で、米ネットワーク局最大手CBSのドラマ「ブル(Bull)」で主演するジェニーバ・カーは、この2人の演技についてこう語る。

1秒たりとも演技を感じさせない怪演

「スティーブン・ユァンは、ハンサムなのに、アメリカ人俳優みたいにそれを売りにしていない。全く自然な演技は、白人にとって『目から鱗』。ドラマ『ウォーキング・デッド』で人気を得たのをテコにして、これまでアメリカにはなかった才能を見せている」「『風と共に去りぬ』のナニー役で、黒人で初のアカデミー賞(助演女優賞)を得たハティ・マクダニエル(故人)を覚えている?スティーブンは、彼女のような人種の壁を破っていくアジア系俳優の旗手になると思う」

父親役を演じたスティーブン・ユアンの演技も光っている(写真:Everett Collection/アフロ)

「ユン・ヨジュンは、韓国ではメリル・ストリープのような存在と聞いた。彼女は1秒たりとも演技を感じさせない。これも『目から鱗』だった。彼女のような才能を、アメリカで見いだすことができるのは、喜び以外の何ものでもない」

最後にミナリは、韓国系2世のリー・アイザック・チョン監督の半自伝的映画だという。デビッドは、チョン監督の子供時代の投影である。韓国系が農園を開拓したことはあまり知られていないが、彼の家族は実際にアーカンソー州に移住し、父が農園を始めた。

ちなみに、過去10年さかのぼると、アカデミー賞作品賞で、移民を描写したものは一本もない。ストーリーに意外性があったり、大金をつぎ込んだいかにも映画、という作品ばかりが受賞している。2世監督が、俳優ブラッド・ピットなどの支援を得て、アメリカの真の姿を描いたミナリという映画の製作した過程が、いかにも移民国家らしい。

津山 恵子 ジャーナリスト

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つやま けいこ / Keiko Tsuyma

東京生まれ。共同通信社経済部記者として、通信、ハイテク、メディア業界を中心に取材。2003年、ビジネスニュース特派員として、ニューヨーク勤務。 06年、ニューヨークを拠点にフリーランスに転向。08年米大統領選挙で、オバマ大統領候補を予備選挙から大統領就任まで取材し、『AERA』に執筆した。米国の経済、政治について『AERA』ほか、「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」「HEAPS」に執筆。著書に『モバイルシフト 「スマホ×ソーシャル」ビジネス新戦略』(アスキーメディアワークス)など。X(旧ツイッター)はこちら

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