事業仕分けの仕掛け人、現場の風を官に吹かせた--加藤秀樹・行政刷新会議事務局長

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 舞台は構想日本が00年から12県の知事と取り組んでいた「国と地方の税制を考える会」だった。同会には岩手県の増田寛也知事、宮城県の浅野史郎知事(ともに当時)などいわゆる改革派知事が参加。その一環として02年、岐阜県で初めて事業仕分けを実施した。予算項目ごとに行政サービスの必要性を議論し、必要か不要か、国、都道府県、市区町村、民間のどこが実施すべきかを判定したのだ。

事業仕分けで加藤がこだわったのは、「外の視点」と「公開性」である。当事者だけの議論では、従来の考え方の枠を破れない。他の自治体職員や企業人など現場を熟知した人に仕分け人として議論に加わるように依頼し、地域住民にも傍聴席を用意した。

その後、事業仕分けは市役所を中心に全国で40以上の自治体に広がっていく。途中で試行錯誤も重ねた。たとえば最初の2年間は自治体の全事業が対象で、6000もの事業を数分ずつで評価したこともあった。

「これで全体像はつかめるが、1個ずつ丁寧に議論できたわけではない。その後、100個くらいに限定すると、問題点がより明確に見えてきた」

自治体の仕分けをやればやるほど、国の地方に対するコントロールの弊害も見えてきた。国からの補助金をもらおうと思うと、国の指示に従わざるをえない。現場を知らない中央省庁が押し付ける事業ほど無駄が多い。地方もそこに甘えている。「念頭にあったのは最初から国」と加藤が言うように、どうやって国に切り込むかが次の課題だった。

そうした中、08年に自民党「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」の河野太郎チームが、文科省などを対象に事業仕分けを実施。そして09年秋、政権交代を機に、鳩山政権が国の事業仕分けの実施を決めた。その現場監督としての行政刷新会議の事務局長に抜擢された。

前滋賀県高島市長で、国の事業仕分けに仕分け人として参加した海東英和は「政権交代直後のたった2カ月間であれだけ準備できたのは、構想日本が地方自治体で積み重ねてきた蓄積があったから」と語る。

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