ヨモギ以外の春の野草についてもずいぶん詳しくなった。ヨモギがあんなに無造作にそこらに生えてるんだから、これはきっと私が無知なだけで、ほかにもいろいろあるに違いないと本で調べたり田舎の友人に教えてもらったりしたら、やはりいろいろあったのだ。
都会でも採れるのは、カラスノエンドウ、タンポポ、ツワブキ、アザミなど。田舎や山や田んぼに行けば、タゼリ、コナギ、ツクシ、ノビル、カンゾウ、イタドリなど、これはもう春の大売出し状態である。
タンポポを食べたときの衝撃は忘れられない。
もちろんタンポポの存在はずっと知っていた。何しろ子どものときから親しんでいるおなじみの雑草だ。でもこれを食べられることをどれほどの人が知っているだろう?
私もまったく知らなかった。自然食料理の分厚いレシピ本で初めてその事実を知り、半信半疑で近所の道端で可憐に咲いてるやつを3株ほどブチっと引っこ抜き、さっそく指示どおり作ってみた。
タンポポの味は「未知の世界」
で、腰を抜かしたんである。
それは、それまでの人生で想像したこともない味わいであった。あえて言えば「鮮烈」としか言いようのない味。
いうておくが、私もそこそこの食いしん坊であり、金を稼いでいたころはそこそこの世界の珍味や高級料理を食してきたのだが、そのどれとも似ていない。いやいやこのグルメ情報てんこ盛りにあふれまくる世界にあって、まだまだこんなすごい未知の世界があったのか!と、台所で一人瞠目したのである。
ここまで言ったら、そのうろ覚えのレシピを書かずには済まされまいが、レシピというほどでもないのだ。塩で湯がいたあと、アクが気になれば水にさらし、それを油で炒め、醤油をジュッとかける。それだけである。それだけで驚きのワンダーランド。しかも食材はそこらに生えてるタンポポである。まったく自然とはどれほど気前のよい存在であろうか。
ちなみに柔らかいタンポポは、生でそのままサラダとしても食べられる。これは案外淡白で、普通の野菜のようである。
もうちょっというと、タンポポの根っこのきんぴらというのがものすごくおいしいらしいと聞き及び、これはぜひ食してみんとしたのだが、いざ採取に及んだところシロートが簡単に手を出せることではないことが早々に判明した。
何しろタンポポの根とは、地上の生え際からどこまでもまっすぐに下へ下へ、掛け値なく直線的に、深く地面へと突き刺さっているのである。安易に力ずくで抜こうとすれば簡単にブチっとちぎれ、1センチほどしか収穫できない。ちゃんと抜こうと思えばスコップを使って深く掘り起こすという大事業を要する。
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