何しろスーパーで案外高い値段で売ってるやつだ。そう、多少小さいがれっきとした「ビワ」以外の何物でもない。当然タダである。でも誰も採りゃしない。何か問題があるのか? とりあえず1個もいで食す。いやいやまさにビワ! ちゃんとおいしい。何の問題もなし。
以来、そこを通るたびに数個もいでは幸せにもぐもぐ食べた。ライバルはおらず、ひと月ほどビワ食べ放題であった。これでわが初夏のデザートは無料で完璧に確保された。しかしなぜ誰も見向きもしないのだろう?
いや考えてみれば、私だって何年もこの道を通りながらスルーしてきたのである。何しろ食べ物とはちゃんとした店で買うもので、「そこらに生えてる」など完全に想定外。それに道端で採って食べるなど、下品というか何というか「ありえない」行為であった。
今もよく「それって汚くない?」と言われる。でもヨモギ経験者である私はそのハードルをアッサリ越えたのだ。汚ければ洗えばよし。そもそも農薬と犬のおしっこのどちらが危険なのか私にはわからない。
ま、それほどヨモギがウマかったんである。いいの、誰もわかってくれなくても。むしろライバルがいないほうが好都合だよグフフ……と思っていたら、ある日、強力なライバルの存在に気づいたのであった。
その日も吟味のあげく大きくておいしそうなビワをウッシッシともぐと、何だか妙な感触が。慌てて裏を見るとありゃ、誰かの食いかけではないか!
こ、こんな行儀の悪いことするのは誰やねーん!
張り込みの結果、犯人はすぐに判明した。それは鳥の仕業であった。ヤツら私と同様、実が熟したところを狙ってセッセとつつきに来るのである。
ライバルは、鳥……。
なんというか、人生のスケールがぐっと広がった気がした。
タンポポを食べたときの衝撃
あ、いつの間にか野草の話じゃなくて果物の話になってましたね! ま、肝心なことは、資本主義の狭い思い込みを離れると、案外それだけで世界がぐっと広がるということである。
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