不妊に悩む人を助ける「保険診療化」の深い意義 経済的負担減らし周囲への認知、標準化も進む
体外受精とは、採取した精子を卵子に振りかけて体外で受精させ、培養して胚になった段階で子宮に移植するという方法。顕微授精はその名のとおり、顕微鏡で確認しながら1つの精子をピックアップし、卵子に直接注入して受精させる。あとは体外受精と同じやり方となる。
一般的には、タイミング法を半年~1年行ったのち、人工授精に進み、そこで数回の治療を経ても妊娠にいたらない場合は、体外受精か顕微授精のどちらかを受けることになる。
また卵子が育たなかったり、排卵が起こらなかったりするときには、排卵誘発剤(飲み薬や注射薬)による治療も加わる。
「排卵誘発剤を用いると、一度に複数の卵子を採取できることが多いので、その場合は、その卵子を受精させた後、凍結して保存し、次の移植に使う。凍結胚移植も今では一般的に行われています」(松本医師)
不妊治療の保険適用については、現行では一部の不妊検査や排卵誘発剤の使用に限って認められている。それ以外の人工授精、体外受精、顕微授精は自由診療で、またこうした治療を目的に実施される検査や処置、投薬にも健康保険は使えない。
この範囲を拡大するのが、今回の「不妊治療の保険適用」ということになる。実はこの話は過去に何度か提案され、検討されたことがある。
菅首相の発言によって風向きが変わってきた
20年以上にわたり妊娠や出産、不妊などに関するポータルサイトを運営するジネコの長友博一さんは、「結局、どこまでの治療を健康保険でカバーするのかがネックになり、議論が深まらないままお蔵入りになっていた」と振り返る。だが、「今回は違う」と、風向きが変わってきたのを実感する。
「やはり大きいのは、菅首相がしっかり不妊治療の保険診療について発言したということ。実際、弊社サイトのユーザーの関心もその一言で一気に高まりました」
では、不妊治療が健康保険で認められると、状況はどう変わるだろうか。不妊治療の是正を求める活動を行う「不妊・不育治療の環境改善と目指す当事者の会」のメンバーに話を聞いた。なお、メンバーは、1年~数年以内に高度不妊治療を経験している。
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