不妊に悩む人を助ける「保険診療化」の深い意義 経済的負担減らし周囲への認知、標準化も進む

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「いちばんは経済的な面」と言うのは、ふじこさん(ツイッターのアカウント名、以下同)。不妊治療は夫婦の貯金を崩しながら行っていった。2人目の治療も検討中だが、それを阻んでいるのが費用の問題だ。

「40万円とか、とんでもない金額が毎月出ていくんですよね。それで結果(妊娠)が得られないと、なんでこんなにお金を払ってまで……という喪失感に襲われます」

それでもふじこさんはある程度手元に貯金があったため、治療を受けるという選択肢を選べたが、経済的な問題で治療を受けるのを諦める、あるいは先送りする夫婦も決して少なくない。

不妊当事者によるセルフサポートグループNPO法人Fineが実施した調査では、不妊が心配だが治療を受けていない理由で最も多かったのが「経済的な理由」だ。また、治療中の夫婦が次の治療に進むことを躊躇、延期、断念した理由もやはり「経済的な理由」で、若い世代ほど多かった。

体外受精の平均治療額は38万円

ちなみに、同調査によると体外受精を受けた人の43%、顕微授精を受けた人の60%が、1回(周期)当たり50万円以上の治療費がかかったと答えている。厚生労働省の研究班の調査では、体外受精にかかる平均の治療額は約38万円、顕微授精は約43万円となっている。ふじこさんは言う。

「治療を始めるのが遅くなれば、それだけ妊娠率も下がってしまうから、もっとお金がかかる。窓口負担が10割の助成金ではなく、保険適用によって3割ですむようになれば、早い段階から治療してみようと思う夫婦も出てくるのではないでしょうか」

経済的な問題だけではない。

同会のぽころぐさんは、保険適用によって周囲の不妊治療に対するイメージが変わることを期待する。ぽころぐさん自身は、不妊治療を受けることが「後ろめたいこと」であると思い込み、治療中は誰にも打ち明けることができず苦しんだという。

「妊娠や出産は自然なものという価値観に縛られていたのだと思います。それで治療のスタートも遅れました。でも、今後は諸外国のように健康保険で治療が認められれば、子どもを望む方にとっては不妊も治療やサポートが必要という社会の認知が進むと思います」

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