不妊に悩む人を助ける「保険診療化」の深い意義

経済的負担減らし周囲への認知、標準化も進む

治療の標準化、適正化について話すのは、ゆなさん。最初から顕微授精を行い、3つの医療機関で治療を受けたという。

「医療機関によって採卵に対する考え方とか、培養技術とかが全然違いました」

最初の医療機関ではこれ以上の治療は当院ではできないとさじを投げられ、2番目の医療機関では何十万円もかけてオプションを付けてフルコースの治療を受けるも、結局、妊娠できなかった。ところが、諦めかけた3番目の医療機関では、ごくシンプルな顕微授精で妊娠にいたったという。

「私たちには、どんな治療が適切かわからない。だから勧められたままに治療を受けてしまう。ですが、こんなに医療機関によって差があっていいのか、はなはだ疑問です。その点、保険診療になれば標準化した治療が確立されるはずで、過剰な診療を受けることなく、誰もがどこでも同じ診療を受けられるようになる。これは大きいです」

保険診療の基準となるであろうガイドラインについては、今年夏ごろには日本生殖医学会によってできあがる予定だ。

経済的な負担の軽減、周囲への認知、そして治療の標準化。こうして見てきたとおり、不妊治療が保険診療になることで、不妊治療が大きく変わることは間違いない。

どこまでの治療を保険診療で認められるか

ただその一方で、懸念材料がないわけでもない。その1つが「どこまでの治療を保険診療で認めるか」だ。

工程表では「保険外併用」についても検討される予定だ。松本医師は言う。

「進歩が著しいタイムラプス(受精卵を培養する際、その発育を一定間隔で自動撮影して確認できる特殊な培養装置)などのオプション治療をどう取り扱うか、どこまで保険で認めるか制度設計が難しいところでしょう」

もう1つは、助成金の問題だ。来年の今ごろには始まっている不妊治療の保険診療。明らかなのは保険診療の開始とともに、これまであった助成金は打ち切られる。「保険外併用の自由診療にあたる部分が増えて高額となり、結果的に治療を受ける側の負担が増えることのないようにしてもらいたい」と長友さんは言う。

今後の動向が注目される、不妊治療の保険診療化。先の当事者の会のmihoさんは言う。

「私たちは、少子化対策のために産みたいわけではない。でも、未成熟な日本の不妊治療の風土が、保険適用をきっかけに成熟することを望みます」

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