日本に住む黒人作家「アジア系差別」に思うこと 差別が別の差別を呼ぶ悪循環をどう考えるか
この1年、アジア系の人々はアメリカ中でヘイトクライム(憎悪犯罪)の標的にされ、怯えながら暮らしてきた。こうした攻撃の増加は、トランプ前大統領が撒き散らした人種差別的で排他主義的な発言に起因し、数十万人のアメリカ人の命を奪った新型コロナウイルスを、前大統領が「中国ウイルス」や「カンフルー(インフルエンザを意味する『フルー』とカンフーを掛け合わせた造語)」と呼んで執拗に人種と関連付けたことによって悪化した。
このウイルスを発生させて広めたと中国を責めることで、トランプ前大統領は事実上、中国をわずかでも想起させる人、すなわちアジア系に見える人なら誰でも、連座制によって有罪だと糾弾したも同然だった。
韓国、フィリピン、ベトナム、台湾、そして日本を含むさまざまな国に起源を持つ、トランプが仄(ほの)めかしたようにアメリカ人が死んでいくことの罪を同じようになすりつけられ、その結果、アジア系の人々は、唾を吐きかけられたり、ひどい言葉を浴びせられたり、虐めの標的にされたり、路上で暴行されたりしてきた。
アジア系女性を殴って立ち去った男性
つい先日もアジア系に対する暴力動画が公開された。その動画には、アジア系の女性が真っ昼間に、一見したところ何の理由もなく男性から暴行される様子が映っている。男は彼女に歩み寄り、いきなり殴りかかると、地面に蹴り倒して、無抵抗な女性を踏みつけた。そして何事もなかったかのように立ち去った。
その後警察は38歳の加害者、ブランドン・エリオットを逮捕した。20年前に実の母親を殺害して17年間服役していたエリオットは、終身仮釈放で出所していたが、ヘイトクライムとして重暴行罪で訴追された。有罪になれば25年以下の禁錮刑を科されることになる。
この暴行と同じくらい、いや、もしかするとそれ以上にショッキングだったのは、そばにいた人たちが暴行された女性をまるで気遣おうとしなかったことだ。暴行を目撃していたビルの従業員はドアを閉めてしまい、殴られた女性をまったく助けようとしなかったとされる。
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