日本に住む黒人作家「アジア系差別」に思うこと

差別が別の差別を呼ぶ悪循環をどう考えるか

ただし、1つ重要なことを知ってほしい。アジア系女性を暴行したエリオットは、明らかに精神疾患に苦しんでいる人だということを考慮する必要がある。彼はあろうことか、実の母親を殺して刑務所で17年間過ごしたのだ。

アメリカの刑務所というところは、入所時の精神状態にかかわらず、出所時に健全な精神状態を保っている人はごくわずか、という場所だ。私には入所経験のある知人がいるが、彼らの精神状態は出所時、はるかに悪化していたので、このことは事実として知っている。

黒人コミュニティが持つアジア系のイメージ

しかし、だからといってコロナ禍の中で、あるいはコロナ禍以前でさえも存在していたアジア系とアフリカ系の人々の間で起きた卑劣な出来事をすべて看過していいわけではない。

これら両方のマイノリティ集団は白人至上主義において不可欠な役割を担わされ、アメリカの制度的差別による屈辱や、権利剥奪に苦しんできた。時にはその結果、黒人とアジア系の間で強い絆が生まれることもあった。そのような時、私たちは力を合わせ、団結して共通の敵に対して立ち上がった。

しかし、私たちは同じ立場に置かれていることを忘れてしまうことがある。例えば、私が育った場所ではアジア系は黒人コミュニティに住むことはなかったが、コミュニティの中で商売はしていた。これによって、黒人の中にはアジア系はコミュニティの一部ではなく、地域に「寄生する存在」だという感覚を持つ人もいた。

飲食店、酒店、青果店、クリーニング店、ネイルサロン、そしてそう、スパやマッサージ店(3月にアトランタ殺人事件が起きた業種)は、アメリカ全土の黒人コミュニティに不可欠のものだ。こうした店は一般的に「アジア系」(大多数が中国系・韓国系)に分類される人たちが経営している。

そして、こうした人たちは生活を黒人のお金に依存する一方で、黒人客を見下すような態度で、まるで犯罪者のように扱うことで知られている。黒人コミュニティの視点から見れば、彼らは白人のように繁栄したいという固い決意のもと開発途上国からいわば理想郷にやってきたように見えるが、やってきて初めて、白人が繁栄してきたのは奴隷制や搾取により黒人を犠牲にしてきたからだと知るのだ。

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