日本に住む黒人作家「アジア系差別」に思うこと 差別が別の差別を呼ぶ悪循環をどう考えるか

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今のこの状況こそキング牧師が言っていたことだ。私たちは皆一人残らずこの状況の中にいる、と彼は伝えたかったのだ。そして、この考えを広めようとして彼は殺された。権力の座にいる者たちはこの思想の危険性を知っているが、私自身やほかのアフリカ系の多くの人々が、われわれの兄弟姉妹であるアジア系の人々に対するヘイトクライムの増加に強い嫌悪感を抱いているというのは揺るぎない真実だ。

エリオットがやったことは黒人の総意ではない

私は17年前からアジアで暮らしており、アジア系の家族、友人、仲間、同僚、知人がいる。その私が日本人の妻や、中国人の親友と一緒にアメリカの友人や家族を訪ねたとしよう。

その時に妻や親友がアジア系であるというだけで、新型コロナの責任を不当に被せられ、失礼な言葉を浴びせかけられたり、罵倒されたりするようなことがあったら、私は相手がどんな人種であれ相手を激しくとがめるだろう。  

なぜなら、それは肌の色や「人種」に基づいたある人やグループへの嫌悪であり、いわれなきアジア系嫌悪は私を含む多くの黒人コミュニティのメンバーにとって受け入れがたいものであるからだ。このゲームの本質をすでに見破っているわれわれは、そこに乗っかる事はしないと決めている。

エリオットがやったことは病的で恐ろしい異常行為であり、断じて黒人の総意ではない。彼が信じていることは私、あるいは私の知るほかの黒人の思いとはまったく違う。

私のような考えを持つと思ってもいい黒人を見極めるには、アジア系の友人や家族と共に抗議活動に参加し、「#StopAsianHate (アジア系へのヘイトをやめろ)」「#StopAAPIHate (アジア系・太平洋諸島系住民へのヘイトをやめろ)」と声の限りに叫んでいる人たちを探せばいい。  

彼らこそが私の側にいる人たちだ。

今回、記事のタイトルに「黒人」と使っているが、誰もが人種やその他の属性でラベル付けされない世の中こそ私が目指すところであり、私自身「黒人」とラベル付けされることを望んでいない。あなたが日本人やアジア系である前にあなたであるのと同様、私も黒人である前に私なのだから。

バイエ・マクニール 作家

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Baye McNeil

2004年来日。作家として日本での生活に関して2作品上梓したほか、ジャパン・タイムズ紙のコラムニストとして、日本に住むアフリカ系の人々の生活について執筆。また、日本における人種や多様化問題についての講演やワークショップも行っている。ジャズと映画、そしてラーメンをこよなく愛する。現在、第1作を翻訳中。

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