エルメス、ルイ・ヴィトンの稼ぎ頭とは? 高級ブランドを支えるアイテムには共通点がある

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ここがとても重要なポイントなのですが、“バッグが売れている”ことが会社の経営としては非常に大事なのです。どのようなアイテムであっても売れるにこしたことはありませんが、それでもバッグがたくさん売れると、うまみがあるのです。

では、バッグが売れると、なぜビジネス的においしいのでしょうか。そのいちばん大きな理由は値段です。先ほど挙げたブランドのバッグは値段が高く、平均して30万円以上します。素材やパーツなどを好みにあわせてカスタマイズしたものでは、数百万円するようなバッグもあります。つまり、単価がかなり高いのです。利益率が高いことから、バッグをひとつ売るほうが、洋服を1着売るより、はるかに効率よく稼げるのです。

そして、こちらの理由のほうが決定的なのですが、定番商品となったバッグには賞味期限がないということです。そこが衣類とは異なるところで、在庫処分のリスクが少ないのです。

現在のファッション業界は、半年に一度新しいコレクションを発表するというサイクルで回っています。そして、ブランド側にとっては、その半年という短い期間で商品を売り切らないと、商品は定価で売れなくなるばかりか、在庫を抱える、という厳しい現実があります。というのも、いったんプロパー商品(定価で売れる商品)の時期を過ぎると、商品はセールなどのたびにどんどんと値引きされるので、会社側の利益もどんどん減ってしまいます。そして、ある一定期間を過ぎると、在庫コスト(保管費用)のほうが高くつくケースもあります。そうなると、在庫自体が、経営を圧迫することになります。

しかし、そんな話とはまったく無縁なのが定番のバッグです。定番商品は、シーズンを超えて毎シーズン販売できるため、基本的にはセール対象外とし値引きはしません。つまり、値崩れがないのです。賞味期限やセールがなく、いつまでも定価で利益率も高いまま販売することができるというのは、ファッションブランドにとっては理想です。そして、その理想的なアイテムを売り続けているのが、先ほど紹介した高級ブランドです。それぞれのブランドにあるアイコニックなバッグは、ファッション業界のサイクルとは無縁のところで、何十年にもわたって高利益を生み続けているのです。

なぜ高くても売れるのか

それにしても、なぜ高級バッグが売れ続けるのでしょうか。

それは、人々を魅了してやまない「ブランド力」にあります。言い換えると、ブランドには、消費者を納得させる力があります。

そして、その力を生みだすには、主に3つのキーファクターがあります。

①商品力:一流デザイナーによる優れたデザイン、希少価値のある特別な素材、熟練の技やハンドメイドを含む最高の技術などを用いたクオリティ。
②マーケティング力:広告(著名カメラマンによる撮影、モデルやセレブリティの活用)、ファッションショーやPRイベントなど、ブランディングに相応しいイメージ構築と宣伝。
③世界観の具現力:ブランドの世界観を伝えるため場所( 有名建築家による店舗など)、適切なサービスを提供するためのスタッフ、実際にブランドの世界を消費者に体験してもらうため空間づくり。

 

ブランドという世界をつくり、そのクオリティを維持するためにブランドが払うコストは決して小さいものではありません。

それでも、確固たる世界観を築き、ブランドとしての魅力と信用度が高められれば、消費者は高価な商品であっても受け入れます。

こうして、魅力的なブランドは、高価なバッグを売り続けることができるのです。

ナオヨ マディソン ファッション ジャーナリスト

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ナオヨ マディソン / Naoyo Madison

青山学院大学 国際政治経済学部卒業。大手総合商社に入社し、配属先の繊維本部で欧州系インポートブランドを担当。その後、パリ ソルボンヌ大学に留学する為に渡仏。帰国後は、ラグジュアリーブランドを扱うセレクトショップでアシスタントバイヤーとして勤務した後、イタリア系ブランドのジャパン社に転職。数社にてキャリアをつみ、MDバイヤーとして活躍。現在は、ジャーナリストとしてロンドンやパリをはじめとする国内外のファッションショーをまわり、ランウェイレポートやインタビュー、ファッションビジネスを中心とした記事を執筆する。

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