日経平均は日銀買い減少で今後も急落するのか

「ETF買い入れ」政策変更の影響はどこまで深刻?

まず、前場下落率1%超と0.5%超はそれぞれどれくらいの頻度で発生するのだろうか。2015~2020年のデータを検証してみると、前場下落率0.5%基準を満たす日は平均株価で年間55日程度、1%基準を満たす日は26日程度しか発生しない。

それに最近の1回(1日)当たりの買い入れ額である500億円をかけると、前場下落率0.5%基準では年間約3.1兆円(500億円×55日+設備・人材ETF0.3兆円)、1%基準では年間約1.6兆円(500億円×26日+設備・人材ETF0.3兆円)という数値になる。

おそらく買い入れ基準を前場下落率1%基準に変更したことから判断すると、日銀が年間6兆円を買い入れる意図がないことは明らかであろう。もちろん今後日銀が買い入れ基準を緩めに変更すれば金額は大きく変わってくる。だが、株式市場が急落しない限りその可能性は低い。現在の前場下落率1%基準が続くと考えれば、2兆円という数値は妥当に思える。

「売らない株主」日銀によるストック効果とは

「ETFの買い入れ額が減少すれば株式市場の押し上げ効果は弱まる」――。この文章は、一見すると当然のように聞こえるが、考え方は間違っているかもしれない。

なぜなら「ストック効果」という視点が考慮されていないからだ。ここでいうストックとは、10年超にわたるETF買入れによって日銀内部に積み上げられた株式残高を指す。それら株式は売り圧力から隔離されているため、その残高拡大は市場全体の需給が引き締まることを意味する。

これはストック効果と呼ばれ、日銀が株式を売却しない限りにおいて累積的に強まっていく。日銀が実質的な大株主として君臨することは、一般的に副作用として認識されているが、見方を変えれば、それこそが政策効果と言える。「売らない株主」である日銀のETF買い入れは、個人投資家や海外投資家の買いと大きく異なることを改めて認識しておく必要があるだろう。

フロー効果のみに着目すれば、確かにETF買い入れの減額は政策効果減衰を意味する。ただし、ストック効果が十分に効いている状態では、少量の買い入れでも比較的大きな効果を得ることが期待されるため、今後フロー効果は弱まったとしても、ストック効果が累積的に強まっていくことを加味すると、中長期的に政策効果が弱まっていくとは限らない。

日銀が6兆円の買い入れ目標を削除して以降、日経平均はやや軟調に推移している。買い入れ減額に対する不安が利益確定売りを誘発したのは確かだろう。だが、日銀が実質的にETF買い入れを減額した2月の株式市場はすこぶる堅調であったし、新型コロナの大流行発生前の2019年も年間の買い入れ額は4兆円強まで減額されたが、株価は堅調であった。こうした過去の実績などを踏まえると、ETF買い入れの減額がもたらす影響は限定的と考えられる。

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