コロナで「占いを信じる」20代女性が増える理由 調査とインタビューで判明した大きな変化

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Sさんは会社で人事を担当しているとのことで、こんな話もしてくれました。最近の学生さんに会うと、圧倒的に“川下り型”が多いと感じる、というのです。

川下り型とは、キャリアの歩み方や人生の考え方を2タイプに分けたときの考え方です。将来なりたいものから逆算するタイプを山登り型、つねに川を漕いでいき、分かれ道が来たときにどちらに行くかを考えて進むタイプのことを、川下り型といいます。

私も学生のときは、例えば受験やダンスコンクールでの優勝といったわかりやすい目標があったけど、仕事を始めたら、将来どうしようかと考えてもキリのないことだと悟り……徐々に自分も川下り型になっています。いくらでも選択肢があるからこそ、今から狭めたらもったいないので、無理に先を考えないようになりました。

今の自分は前と比べて何が好きなんだろう、最近こういうことが好きになってきたなといった、今の自分を知ることに時間を割くようになりました。将来の設計より、今の自分の振り返りを大事にしているし、コロナ禍でよりいっそう強まった感じがします。


「今の自分」を意識して大事にしていることがわかります。先の見えない将来のことを気にしてもしょうがない、ということの裏返しかもしれません。

何が幸せで何が不幸せなのか、その定義は人によって異なり多様化している時代です。今の自分を大切にすることで、自分の幸せを見つけ、自分で認めてあげようとしているように感じます。

幸せになるための努力をする世代

最後に、今回話を聞いた中では最年少のOさん(タロット占いを始めた大学生)は、コロナ禍で下がってしまった幸福度を、自分たちがどう取り戻そうとしているかをこのように語ってくれました。

私たちは、自分が胸を張って幸せと言えるように、いつも幸せになる努力、楽しむ努力をしている世代だと思います。自分にとって幸せ・楽しいこととは何か?を考えて、努力してその幸せに向かおうとする人が多いと感じます。

また、自分なりの幸せを見つけようとするので、多様な価値観とともに、幸せの種類も増えている気がします。例えば、恋愛がうまくいかないときは単に不幸だと思うのではなく、別の場所で楽しみを見いだそうとするので、好きなアイドルやアニメを見つけてのめり込んでみるとか、カフェを回ったりご飯を食べ歩いたりするとか、どこかで幸せを感じられるように行動すると思います。幸せじゃない、楽しめていない自分なんて認めたくはないのです。

ここまで、「占い・おみくじを信じる」を入り口に、20代女性の幸福観を探ってみました 

家にいる時間が長くなって新しいことを始めてみたというのは、単調な生活を充実させるためだけでなく、幸せになるための模索でもあるのかもしれません。自分を知り、今を大切にし、自ら幸せになるんだという強い意思を、20代女性の行動の裏側に感じました。

インタビューを通じて自身を振り返ると、自分の幸せを外や周りに求めすぎていないか? 自分にとっての幸せが何かをわかっていたか? そんな疑念が頭をよぎりました。

せっかく1人の時間が増えたのだから、今回登場してくれた20代女性たちのように、何か新しい趣味を通じて自分を見つめる時間を増やしてみるのもいいかもしれません。先がわからない世の中で、拠り所になるのは他人や未来ではなく、今の自分なのだということを、改めて感じるきっかけになるのではないでしょうか。

【参考情報】
「生活定点」調査概要
調査地域:首都40km圏、阪神30km圏
調査対象:20~69歳の男女2597人(2020年・有効回収数)
調査手法:訪問留置法
調査時期:1992年から偶数年5月に実施(2020年調査のみ時期が異なり、6月24日~7月31日実施)
荒井 自如 博報堂生活総合研究所・上席研究員

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あらい じにょ / Jinyo Arai

2012年(株)博報堂入社。営業として、酒類、飲料、トイレタリーなど様々な企業の戦略立案・広告制作に携わる。1年半の産休・育休を経て、2018年から現職。

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