日経平均「3回目の3万円台」に付きまとう不安 3万円定着と行きたいが「気になる指標」がある

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この2万9000円台もわずか4日で通過し、2月16日の引け値3万0467円の30年半ぶりの高値を迎えることになったわけだが、この日の乖離率は前出の24.6%をさらに更新、瞬間的に26.3%まで急上昇した。

直後はご存じのとおりの調整相場入りで、一気に2万9000円を割れた。その後、NYダウの史上最高値に再び押し上げられ3月18日には一時3万0216円まで戻ったが、このときの200日移動平均乖離率も20.3%と、20%を超えていた。そしてこの直後、再度2万9000円割れとなった。

やや長くなってしまったが、乖離率20%台がいかに節目になったかがおわかりいただけたであろう。

さて、日経平均は2日の465円高のあと、シカゴの先物では一時3万円に乗せて帰ってきた。どうやら「今年3回目の3万円」に手が届くようだが、3月24日に約12.5%まで低下した乖離率は、約17.2%と20%をうかがうところまで戻っている。

現在の200日移動平均は2万5483円であるので、20%乖離は3万0579円となる。「3度目の正直での3万円定着」を祈念したいところだが、3万円超をどこまで買うべきか、かなり迷うところだ。

兜町では「200日移動平均との2桁乖離が、昨年11月6日から先週4月2日までの立ち会い日数でちょうど100日になったが、100日ほどの日柄で調整が完了したとは思えない。これから一気に上値を取ると、すぐに上方乖離20%台の展開となり、またまた高値警戒感が出る。持続的な上昇にはせめて1ケタ乖離くらいまでの調整が必要」との見方も多い。

10%乖離の位置は、今週末の200日移動平均推定値の2万5672円で計算すると、2万8239円となる。

この日経平均に対する相場感覚は、1987年のブラックマンデーから1989年の平成バブル時の高値3万8915円までにかかった時間と比較するとわかりやすい。

当時は日経平均が1.8倍になったが、かかった時間は25カ月だった。だが、今回はコロナショックの安値から30年半ぶりの高値まで同じく約1.8倍高になったが、かかった時間はわずか11カ月。これはあまりにもスピードが早すぎる。

上げすぎれば下がるのが相場だ。アメリカの経済も新たな成長の姿が見えてきたが、金融当局に引き締めの気配はない。金利もインフレ率も彼らの目から見れば「低い水準」だ。少なくとも、今は弱気になる時間軸ではない。

しかし、今の相場が当たり前と思うのもどうか。平成バブルを超す勢いで動いていることを自覚すべきだ。このスピードが「遅い」と感じる投資家は注意が必要だと思う。上がったときに先走らず、兜の緒を締めることこそ、この大相場に最後まで乗っていける投資家だと思っている。

(本記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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