緩やかなドル高シナリオに潜む「重大リスク」 ソニーFH・尾河眞樹氏に聞く今後の為替見通し
米金利上昇がもたらしたドル高
――為替市場では2021年に入ってドル高円安に転じ、一時1ドル109円台をつけました。
アメリカで景気回復が顕著になって長期金利が上昇したことがドル高に寄与している。名目金利も上がっているが、実質金利がジワっと上がってきたことが大きい。歴史的に見ても、ドル円相場は日米の実質金利差との相関性が高い。その相関関係がコロナショックによる混乱状況の中でいったん崩れたが、この金利上昇局面で再び戻ってきた形だ。
アメリカはコロナワクチンの普及を急いでおり、最低1回接種した人が全国民の2割を超えてきている。加えてバイデン政権による大型の経済対策によって景況感がV字回復している。
FRB(連邦準備制度理事会)はインフレ率や失業率がまだ目標に達していないとして、今の緩和的政策を維持すると言っているが、市場の実質金利は上昇している。正確に言えば、日本より低いアメリカの実質金利のマイナス幅が縮んで、ドル高円安に作用している。
――今後の方向性をどうみますか。
年末に1ドル110円を予想しており、緩やかなドル高基調が続くと見ている。FRBが緩和継続の必要性を強調しても、市場は景気のV字回復で2021年1~3月期にはテーパリング(量的緩和の規模縮小)が始まると見て、出口戦略を先取りする動きを強めている。FRBが抑えようとしても長期金利は上昇しそうだ。
一方、日銀は3月19日の金融政策決定会合で緩和的政策の継続に加え、貸出促進付利制度の創設を発表した。日銀は「金融仲介機能への影響に配慮しつつ、より機動的に長短金利の引き下げを行うことが可能になる」としている。市場ではマイナス金利の深掘りはできないと見透かされていたが、インセンティブを付ければ(深掘りは)可能だと示すメッセージだった。
日銀がさらなる緩和手段を得た意味は大きい。円が高騰した時などに、それを阻止するための追加緩和が可能ということであり、極端な円高にはなりにくくなる。2021年はやや右肩上がりのドル高で推移していく可能性が高い。
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