緩やかなドル高シナリオに潜む「重大リスク」 ソニーFH・尾河眞樹氏に聞く今後の為替見通し

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

――日本銀行がETF買い入れ対象から日経平均連動型を外したり、FRBが大手銀行向けの補完的レバレッジ比率(SLR)規制特例を3月末で撤廃すると発表したことを受け、日本株は3月19日以降、4日続落となりました。

SLR特例撤廃はアメリカの株価にも影響したが、予定どおり撤廃することでFRBが長期金利の上昇抑制に消極的と受け止められ、株安につながった。ただ、実体経済が改善していく中で、(コロナショックに伴う)緊急的な対策がこれ以上必要ないという自信の表れでもある。

日銀のETFに関してはテクニカルな問題であり、一時的な要因と考えている。アメリカを中心に経済が回復基調にある中、日本もその恩恵を受けて輸出中心に経済が回復していくことが見込まれる。

中国経済もやや踊り場ではあるが基本的には良好だ。そういう中での日本株の下落はあくまで一時的なものと言えるだろう。

共産党100周年の中国で景気対策

――アメリカの金融情勢が変化する中、新興国の先行きをどうみていますか。

アメリカの金利が上がって新興国から資金が流出して通貨安になると、インフレ懸念が高まり、景気がよくないのに利上げに追い込まれてしまう。ただ、世界経済が回復して資源価格が上昇すれば、資源を輸出している国は新興国でもメリットは大きい。

また、中国は7月に共産党結党100周年を迎えるため、2021年の景気は決して腰折れさせないだろう。オーストラリアなどは対中政策を厳しくしているため、対中摩擦が若干懸念材料になるが、中国の景気対策の恩恵は受けている。

つまり、資源国や中国と経済関係の深い国、さらにはコロナを比較的うまく抑え込んでいる国に関しては大きな心配はないし、通貨が持ち直す可能性が十分にある。

反面、それらの条件に当てはまらない国や、中央銀行総裁が政治的に解任されたトルコのように混乱している国は懸念される。

――マーケットの最大の波乱要因は何ですか。

まずは世界的に変異株が拡大しているコロナの感染状況。それから、アメリカのインフレが想定以上に上昇した場合の金融政策のゆくえ。そして、先日アラスカで舌戦を繰り広げた米中間で、追加的な制裁の応酬があるかどうかだ。

米中はまさに世界経済のドライバーであり、両国の対立激化は将来的に大きなリスクとなる。

中村 稔 東洋経済 編集委員
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事