セレナの5%しか売れないエルグランドの憂愁 日産が抱える「ブランドイメージの低価格化」

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以上のように、日産とホンダの売れ筋は軽自動車とコンパクトカーが中心になった。ブランドイメージも「小さくて実用的なクルマのメーカー」だ。そうなると「日産車を買うならルークスかノートでしょう」と判断され、エルグランドのようなLサイズの高価格車は、車名は知っていても購買の対象にはなりにくい。

現行「ルークス」は「デイズルークス」から改名して2020年2月に登場(写真:日産自動車)

その点でトヨタは、一部のOEM車を除くと軽自動車を用意せず、ブランドイメージの小型化を抑えている。だからこそアルファードも好調に売れると言える。

日産やホンダが抱える「ブランドイメージの低価格化」は、高価格車の販売を低迷させるだけでなく、そうした車種の商品開発や改良に消極的になり、より一層販売を落ち込ませるという悪循環を招いている。エルグランドやオデッセイは、まさにその悪循環に陥っていると言える。

とはいえ、トヨタも安泰ではない。今はアルファードが好調に売れているが、全店が全車を扱うようになったから、今後は売れ筋車種がコンパクトで低価格の「ヤリス」や「ヤリスクロス」に偏っていくと考えられる。日産やホンダの過去を振り返ればわかる通り、系列化を撤廃して全店が全車を扱う体制に移行すると、低価格化が急速に進む。

アップサイジングのストーリーを描けるか?

これからの商品開発や販売促進では、小さなクルマに乗り替えるダウンサイジングに流されず、アップサイジングの消費動向を生み出すことが重要となる。

セレナのユーザーに「次はエルグランドに乗りたい」と思わせるクルマ造りや宣伝をしなければならない。

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系列によって車種がわかれていた時代は、異なる車種には乗り替えにくい面もあったが、今は同じ店舗ですべての車種を購入できる。このメリットを活用すれば、アップサイジングの流れを作っていけるはずだ。

そうなると、Lサイズの上級車種を開発するときも、つねにミドルサイズやコンパクトカーに乗るユーザーを意識する必要がある。その目線から「アップサイジングしたくなるクルマ造り」を行う。ユーザーや販売店がアップサイジングのストーリーを描ける開発をしない限り、エルグランドのような高価格車が売れ行きを伸ばすことは難しいだろう。

渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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