セレナの5%しか売れないエルグランドの憂愁 日産が抱える「ブランドイメージの低価格化」

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全長が4800mmを超えるLサイズミニバンには、ホンダ「オデッセイ」もあるが、2020年の登録台数は月間平均で800台だ。つまり、好調に売れているLサイズミニバンはアルファードだけなのだ。

「オデッセイ」は2020年11月にビッグマイナーチェンジを実施(写真:本田技研工業)

この「一強多弱」の売れ方は、1990年代までのLサイズセダンに似ている。比較的求めやすい価格帯では「マークII」「クレスタ」「チェイサー」の3姉妹が圧倒的な売れ筋だった。

さらに、1クラス上価格帯では「クラウン」の人気が絶大で、最上級クラスは「セルシオ」(現在のレクサスLS)の独壇場という具合。これに対抗すべく、当時の日産はLサイズセダンでも、スポーティな性能と雰囲気を強調していた。

クラウンの売れ行きが下がった今(2020年の月間平均は1900台)、1カ月に7000台以上を安定して売るアルファードは、クラウンに代わる存在だ。

今は売れ筋カテゴリーがミニバン、SUV、コンパクトカーと多様化して、マークIIやクラウンのような「トヨタVS他メーカー」の構図が見えにくくなったが、「アルファードVSエルグランド&オデッセイ」には、当時の「一強多弱」が濃厚に残っている。

「日産車=低価格で実用的なクルマ」のイメージ

ブランドイメージの変化もある。2020年に国内で新車として売られた日産車の内、「デイズ」や「ルークス」などの軽自動車が43%を占めた。そこにノートとセレナを加えると、国内で売られた日産車の73%に達する。つまり、今の日産のブランドイメージは「軽自動車+ノート+セレナ」なのだ。

エルグランドのように価格が370万円を超えるミニバンは、今の日産のブランドイメージには合っていない。「スカイライン」も1カ月の平均登録台数は320台だし、「フーガ」にいたっては70台程度にとどまる。

「フーガ」は2019年12月の仕様向上以来、変更を行っていない(写真:日産自動車)

オデッセイが低迷するホンダも同様だ。2020年におけるホンダの国内販売は、「N-BOX」の1車種だけで32%を占めた。「N-WGN」などを含めた軽自動車全モデルを合わせると、ホンダの国内販売の実に53%が軽自動車となる。

そこにコンパクトカーの「フィット」とフリードを加えると71%で、「ステップワゴン」や「CR-V」「アコード」といったホンダの中上級車種が占める割合は3割にも満たない。

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