セレナの5%しか売れないエルグランドの憂愁 日産が抱える「ブランドイメージの低価格化」

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ミニバンの機能を考えると、セレナの存在もエルグランドを販売するうえでマイナスに作用している。セレナはミドルサイズミニバンだから、価格はエルグランドと比べて約100万円安いが、3列目はエルグランドよりも快適だ。

畳めば自転車も積みやすい。加えてシートアレンジも多彩で、2列目の中央を前席の間までスライドさせると、収納設備として使える機能もある。e-POWERも用意される“ミニバンの優等生”ともいえる存在だから、エルグランドは比較されると不利になる。

エルグランドの運命を決めた2002年5月

Lサイズミニバン同士のライバル競争でも、不利が生じた。トヨタは1995年に「グランビア」を発売したが、売れ行きを伸ばせず、2年後に発売された初代エルグランドに販売面で惨敗した。

そこでグランビアの後継としてアルファードを開発。駆動方式を従来のFR(後輪駆動)からFF(前輪駆動)に変更して床を低く抑えた。エルグランドと比べると、乗降性、居住性、走行安定性が大幅に向上しており、フロントマスクもシャープに仕上げた。そして、このアルファードを2002年5月22日という2代目エルグランドが登場した翌日に発売して、真っ向から勝負を挑んだのだ。

しかし、受けて立つ2代目エルグランドは、十分な開発費用を掛けられていなかった。

2002年発売の2代目「エルグランド」(写真:日産自動車)

当時の日産は経営危機に陥り、1999年にはルノーと業務提携を結んだ。2代目エルグランドはその最中に開発されたから、プラットフォームは初代と共通で駆動方式もFRだ。機能に代わり映えがせず、シンプル志向のデザインは好き嫌いがわかれた。

その結果、アルファードは発売の翌年となる2003年に、月間平均7000台を記録したが、2代目エルグランドは3000台にとどまった。初代エルグランドは、前述の通り1998年に月間平均4700台を登録していたから、2代目はアルファードの影響を大きく受けて伸び悩んだ。

さらに2010年に発売された3代目となる現行エルグランドは、3列目の居住性や荷室に不満を抱え、アルファードと比べて約100mm低い全高から外観のインパクトも弱く、2012年(2011年は東日本大震災で伸び悩んだから除く)の月間平均は1500台程度であった。発売後に頻繁な改良を行わなかったこともあり、2020年には月間平均300台まで下がっている。

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