セレナの5%しか売れないエルグランドの憂愁 日産が抱える「ブランドイメージの低価格化」

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販売店に尋ねると次のように返答された。

「今の日産では、軽自動車の『デイズ』と『ルークス』『ノート』『セレナ』が売れ筋だ。特にミニバンでは、セレナの人気が圧倒的に高い。エルグランドは、セレナと違ってハイブリッドのe-POWERが用意されない。運転支援機能はあるが、セレナと同じプロパイロットではない。しかも、価格は(比較的ベーシックな)250ハイウェイスターSでも約370万円だから、セレナに比べて約100万円高い」

つまり、エルグランドとセレナの売れ行きを分けた一番の理由は、“商品力”だ。エルグランドは、セレナに比べて100万円ほど高価な上級Lサイズミニバンなのにもかかわらず、セレナで人気の高いe-POWERやプロパイロットが用意されない。現行セレナの発売は2016年だが、エルグランドは2010年で基本設計が古いことも影響している。

Lサイズミニバンなのに狭い3列目

特にミニバンは、天井が高く3列シートを備えるためにボディが重く、燃費には不利だ。

現在、国内で売られるミニバンは、エルグランドとクリーンディーゼルを搭載する三菱「デリカD:5」、トヨタ「グランエース」を除くとすべての車種が、燃費のいいハイブリッドを用意する。ハイブリッドの販売比率が50%近い車種もあるから、エルグランドにハイブリッドがないのは致命的だ。

またLサイズミニバンでは、3列目シートの居住性も大切だが、エルグランドでは床と座面の間隔が不足している。3列目に座ると、腰が落ち込んで膝が持ち上がってしまうのだ。ミドルサイズのセレナよりも窮屈だから、販売面で不利になるのは当然だ。

「エルグランド AUTECH」のインテリア(写真:日産自動車)

3列目の畳み方にも不満がある。セレナやライバルのアルファードは、3列目を左右に跳ね上げて畳むが、エルグランドは背もたれを前側に倒す方式だ。畳むときの操作は簡単だが、座面と背もたれの厚みだけ、荷室の床が持ち上がってしまう。

その結果、荷室高(荷室床面から天井までの寸法)はアルファードと比べて約200mmも少なくなり、背の高い自転車などを積みにくい。エルグランドでは“快適な3列目シート”と“大容量の荷室”という、Lサイズミニバンの2大セールスポイントが弱いのだ。

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