実は、「個別化医療」の分野をリードするのは日本だ。昨年、アメリカのメディアは、中村祐輔・がん研・がんプレシジョン医療研究センター長をノーベル生理学医学賞の最有力候補として紹介した。私は、「感染症ムラ」が中村教授の力を借りたという話は聞かない。これは氷山の一角だ。「感染症ムラ」が仕切る限り、日本は優秀な人材を活用できない。
この結果、日本は技術開発で立ち遅れる。その象徴が、前出のコロナワクチンの開発であり、変異株の検査だ。変異株の検査は、変異株に適応したPCR検査とシークエンス(遺伝子配列の解読)が中核だが、厚労省や感染研の方針でPCR検査を抑制してきた日本には十分な検査能力がない。
例えば、シークエンス能力について、アメリカのバイデン政権は2月17日、「頭金」として2億ドルを投じ、現在の週7000件から2万5000件を目指すと表明したが、日本の能力は昨年末に300件/週程度で、体制を強化した現在でも最大で800件/週だ。アメリカの30分の1程度である。これでは変異株が蔓延していても、認識できない。
「勝負の2週間」の精神論ではどうしようもない
ポスト・コロナの世界は一変するだろう。変化を主導するのは技術革新だ。PCR、ワクチン開発、病床確保、臨床試験遂行などのすべてで、日本のコロナ対策は落第点だ。
ところが、このことが政府で問題視されることはない。技術開発に後ろ向きで、「勝負の2週間」などの精神論を重視する。このあたり「欲しがりません。勝つまでは」と言い続けた、かつての日本の姿と重なる。合理的でない対応は失敗する。日本のコロナ対策は抜本的な見直しが必要だ。その第一歩は感染ムラの解体だと私は思う。体制を刷新し、有能な人材を登用しない限り、日本の衰退は避けられない。
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