「歴史上の偉人」を例に説教しても響かない理由 虎の威を借る狐にならないためにどうすべきか

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彼の著書である『論語と算盤』の内容などを持ち出して、「渋沢栄一も、ささいなことを粗末にするような大ざっぱな人では、しょせん大きなことを成功させることはできないと言っています。だから皆さんも机の周りをきれいに掃除するなど、整理整頓に気をつけてください」というような光景が日本のあちらこちらで見受けられるのではないでしょうか。

さて、若者はそんなとき、どう思うでしょうか。

まず「渋沢栄一は1万円札になるし、教科書で習ったから偉い人だとは知っているけど……」程度のことは思うでしょうが、同時に「結構前の人の言っていることだし、時代背景が違うのだから、渋沢栄一が言っている“から”と言われてもなあ」とも思うのではないでしょうか。

もちろん、ちゃんと『論語と算盤』を読んでいれば、前後の文脈や本質がわかって、渋沢栄一の言葉も刺さるのだと思うのですが、そうではないのに、途中の理屈を全部すっ飛ばして「渋沢栄一が言っていた」で、何かを主張しても、納得感がなくなるのも当然です。

「虎の威を借る狐」にならないために

もちろん、大河ドラマを観たり『論語と算盤』を読んだりして、渋沢栄一をよく知っている中高年の側は途中の理屈も理解して語っているつもりでも、相手はそれを知らないのです。

そうなると、結局「虎の威を借る狐」のような感じになってしまい、大層格好悪い人に見えてしまうことでしょう。渋沢栄一に関するものを観れば、すごい人だなと思い感動するのですが、だからと言って、にわかファンが「とにかくあの栄一が言っているんだから」で押し通してはいけません。

ひと呼吸置いて、渋沢栄一という偉人の名を使わずに、彼が言った内容だけに注目して、途中の理屈を飛ばさずに、自分の理解したことを自分の言葉で話すほうが、若者には伝わるでしょう。

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