「TikTok」で本を売りまくるティーン姉妹の正体

感情モロだしのビデオが利用者に大ウケ

リー姉妹がティックトックに本の紹介動画を投稿するようになったのは、コロナ禍の自宅待機に退屈したことがきっかけだった。姉妹の投稿の多くは映画の短編予告を思わせる。暗い雰囲気の音楽に乗せて、写真が走馬灯のように切り替わっていく。

『The Cruel Prince』の紹介動画では、本の表紙が映った後、馬に乗る女性、血まみれのゴブレット、木の中の城といった画像が次々に現れる。BGMはビリー・アイリッシュの「you should see me in a crown(ユー・シュッド・シー・ミー・イン・ア・クラウン)」。ネタバレを気にする必要もない。動画はわずか12秒。伝わるのは本の雰囲気だけで、筋書きはほとんどわからない。

ブックトックで紹介される本の多くは、発売時に売れ行きのよかった作品だ。権威ある賞の受賞作も少なくない。例えば、2012年にイギリスの「女性小説賞」(当時は「オレンジ賞」と呼ばれていた)を受賞した『The Song of Achilles』(日本語版タイトルは『アキレウスの歌』)がそうだ。ギリシャ神話を再解釈し、英雄アキレウスとその友パトロクロスとの関係を愛の物語として描いたものである。ハッピーエンドで終わる作品ではない。

8年を経てベストセラーのトップ3に

シカゴ在住のアイマン・チャウダリー(20)がティックトックに投稿した動画はこんな具合だ。「これが『The Song of Achilles』を読み始めた日の私」。バーバリー柄のヒジャブ(ムスリムの女性が頭を覆う布)をかぶったチャウダリーが、顔の隣に本を掲げて笑顔を見せている。

「で、これが読み終わった私!」。チャウダリーはカメラに向かって泣き叫び、画面には「劇的な涙と叫び」というキャプションが。動画は約7秒。再生回数は15万回を突破した。

「#songofachilles」のハッシュタグがついた動画はティックトックで1900万回も再生されている。著者のマデリン・ミラーはそれを知って、こう言った。「できるなら、みんなにチョコレートを贈ってあげたい」。

2012年に出版された『The Song of Achilles』は当初の売れ行きもよかったが、今の売れ方はそれとは比べものにならない。アメリカの大半の書店を対象に紙の書籍の販売部数を調査しているNPDブックスキャンによると、『The Song of Achilles』は現在、1週間に約1万部のペースで売れている。女性小説賞を受賞したときの9倍の勢いだ。ニューヨーク・タイムズのベストセラーランキングのペーパーバック・フィクション部門では今、トップ3につけている。

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