「TikTok」で本を売りまくるティーン姉妹の正体 感情モロだしのビデオが利用者に大ウケ
版元のEccoでバイスプレジデント兼共同発行人を務めているミリアム・パーカーによると、販売が急増したのは8月9日だった。なぜ急に売れ出したのか、初めはさっぱり理由がわからなかったが、その後、@moongirlreads_が8月8日にアップした「大泣きさせてくれる本リスト」というティックトック動画で火がついたことがわかった。動画では『We Were Liars』といった作品も紹介され、再生回数は現在600万回に迫る。
「ツイッターはとりあえずアカウントを持っているだけ」と言う著者のミラーは、出版社から教えられるまでそんなティックトック動画があることも知らなかった。「うれしくて言葉も出なかった。作家にとって、読者が作品を気に入ってくれている様子を目にすることほど、うれしいことはない」
@moongirlreads_の正体は、ロサンゼルス地域出身のセレーネ・ヴェレス(18)。ズームの遠隔授業で高校最後の日々を送っていた昨年、ティックトックを始めたという。「大泣きさせてくれる本リスト」という動画を作ったのは、コメント欄で号泣できる本のオススメを聞かれたことがきっかけだった。
「1本数十万円」も出始めた出版社の投稿依頼
ティックトックで13万人を超えるフォロワーを持つヴェレスには、出版社から投稿依頼が相次ぐ。出版前の新刊が出版社から無料で届けられ、今では出版社から有料で動画制作を引き受けることもあるという。
どの出版社から投稿依頼があって、そのギャラはいくらだったか。ヴェレスなど二十数人のブックトック・クリエイターは今、インスタグラムのチャットでそんな情報を交換し合っている。ギャラは投稿1本あたり数百ドルから数千ドルまでさまざまだ(ちなみに前出のリー姉妹は著者から献本されたことはあるが、出版社から接触されたり、金銭を受け取って投稿したりしたことはまだない)。
ランダムハウス・チルドレンズ・ブックスでマーケティングを統括するジョン・アダモは現在、約100人のティックトック・ユーザーに投稿を依頼していると明かす。ティックトックでバズれば、出版業界の販売力でその勢いをさらに盛り上げることができるというわけだ。
大手書店で割引を行ったり、出版社で広告キャンペーンを打ったりして、ベストセラーを生み出す。そうすれば、さらなる売り上げが狙える。しかし、ティックトックがなかったら「そもそも、こんな話題が生まれることもなかっただろう」。 =敬称略=
(執筆:Elizabeth A. Harris記者)
(C)2021 The New York Times News Services
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