3月18日、中国のITベンチャー企業がまた1社、アメリカのニューヨーク証券取引所に上場を果たした。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」向けクラウド・プラットフォームの開発・運営を手がける涂鴉智能(Tuya Smart)だ。ADS(アメリカ預託株式)の発行価格は1単位当たり21ドル(約2289円)と想定レンジの17〜20ドル(約1853~2180円)を上回り、投資家の期待の高さを示した。
2014年創業の涂鴉智能は浙江省杭州市に本社を置き、家電製品などさまざまな機器を音声アシスタント経由で操作可能にするクラウドベースのプラットフォームを提供している。主要顧客は自社製品のスマート化を望む電機メーカーなどだ。涂鴉智能のAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェイス)を組み込こんだ機器は、アマゾンの「アレクサ」やグーグルの「グーグル・アシスタント」などユーザーが使い慣れた音声アシスタントと連携して操作することができる。
今回のIPO(新規株式公開)で涂鴉智能は約9億1500万ドル(約997億円)を調達。同社はこれを研究開発、技術インフラ投資、マーケティング、ブランド構築などの用途に振り分ける計画だ。
家電製品などのスマート化を支援
IPOの目論見書によれば、涂鴉智能はフランスのシュナイダー・エレクトリック、オランダのフィリップス、イギリスのカレックス・エレクトロニクス、日本のパナソニック、中国の聯想集団(レノボ)や海爾集団(ハイアール)などの大手企業を含む多数の顧客を獲得。同社のプラットフォームを利用するスマート・デバイスは2020年末時点で2億台を超え、世界の220を超える国や地域で販売されているという。
「例えば普通の電球の価格は1個0.4ドル(約44円)にすぎない。しかし電球をスマート化すれば(音声による点灯や消灯が可能になり)、1個2ドル(約218円)以上で売れる可能性がある」。涂鴉智能の総裁(社長に相当)を務める陳燎罕氏は、同社の顧客が自社製品のスマート化を望む理由をそう説明する。
顧客ニーズの高まりを背景に、涂鴉智能の業績は急拡大している。2020年の売上高は1億8000万ドル(約196億円)と、2019年の1億600万ドル(約116億円)から70%増加した。しかし創業から7年を経ても最終損益の黒字化には至っておらず、2020年は6691万ドル(約73億円)の純損失を計上した。
(財新記者:張而弛、崔浩)
※原文の配信は3月19日
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