中国のショート動画アプリ大手の快手科技(クワイショウ・テクノロジー)は2月5日、香港証券取引所のメインボードに株式を上場した。
取引開始後の初値は338香港ドル(約4590円)と、売り出し価格の115香港ドル(約1561円)の3倍近くに急騰。その後は下げに転じたものの、終値は売り出し価格の2.6倍の300香港ドル(4074円)で引けた。
株価の上昇とともに時価総額も跳ね上がった。取引初日のピークの時価総額は約1兆3000億香港ドル(約17兆6540億円)に達し、香港市場の時価総額ランキングでいきなり5位に急浮上した。なお、1~4位はネットサービス大手の騰訊(テンセント)、電子商取引(EC)大手の阿里巴巴(アリババ)、生活関連サービス大手の美団(メイトゥアン)、国有銀行大手の中国建設銀行の順である。
注目すべきなのは、快手の株式が1株当たりの議決権に差をつけた「種類株」のスキームを採用していることだ。共同創業者の宿華氏と程一笑氏は発行済株式の約2割しか保有していないが、議決権ベースでは過半数を確保して経営権をがっちり握っている。
議決権異なる「種類株」が香港市場の主役に
実は、時価総額2位のアリババと同3位の美団も議決権が異なる種類株を発行している。さらに、同6位のEC大手の京東集団(JDドットコム)や同9位のスマートフォン大手の小米(シャオミ)も種類株の発行企業だ。
つまり現在の香港市場では、時価総額の上位10社のうち半数が種類株のスキームを採用しているのだ。その目的は、企業のトップ・マネジメントが(一般投資家向けの株式よりも)多数の議決権が付与された種類株を保有し、経営上の意思決定で絶対的発言権を維持することにある。
香港市場では、かつては種類株の上場が認められておらず、解禁の是非を巡って激論が交わされていた。解禁論者は「ニューエコノミー分野の優良企業の誘致に役立つ」と主張し、反対論者は「市場の質や上場企業のコーポレートガバナンスが損なわれる」と譲らなかった。
しかし2014年、当時としては史上最大規模のIPO(新規株式公開)に踏み切ったアリババが、種類株を認めない香港市場を諦めてアメリカのニューヨーク証券取引所に上場した。
これをきっかけに解禁論が高まり、香港証券取引所は2018年、反対論を押し切る形で種類株の上場を容認。その後、アリババは香港市場への重複上場を果たした。
(財新 駐香港記者:尉奕陽)
※原文の配信は2月5日
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら