ここ数年で爆発的に拡大した中国のライブコマース(生中継のネット動画による実演販売)の市場に、静かな再編の波が押し寄せている。
「今年6月はライブコマースにとって1つの分水嶺だった。年後半からは業界全体の成長速度が緩み、2種類のプレーヤーが撤退している」。女性向けファッション商品の電子商取引(EC)プラットフォームを運営する蘑菇街(モーグージエ)の範懿銘・上級副総裁は、10月15日、財新を含む複数メディアの取材に応じてそう語った。
範氏によれば、2種類のプレーヤーの1つは芸能人だ。年初からの新型コロナウイルスの流行で、テレビ番組の収録やイベントが軒並み中止になったのをきっかけに、多くの芸能人がライブコマースに参入した。しかしコロナの流行が抑え込まれ、経済・社会活動の正常化が進むとともに、芸能人は勝手の違うライブコマースを離れて本業に戻りつつある。
第2のプレーヤーは、ショート動画アプリの「抖音(ドゥイン)」や「快手(クワイショウ)」の動画クリエーターたちだ。ライブコマースのブームが盛り上がるなか、多数のフォロワーを抱えるクリエーターが「ひと儲け」をもくろんでこぞって参入した。
しかし成功したのは一部であり、動画クリエーターをサポートするMCN(訳注:マルチチャンネルネットワークの略称。動画メディアのタレントのマネジメントやコンテンツ制作を請け負う組織)の中には撤退を検討する向きがあるという。
ロイヤルティーや購入率の向上が課題に
ライブコマースの変調はデータにも現われ始めた。ネット業界専門の調査会社によれば、ライブコマース司会者の人気ランキング上位50人による9月の販売総額は90億6000万元(約1417億円)と、8月の102億2000万元(約1598億)から約11%減少した。
蘑菇街は2011年に創業し、2016年3月からライブストリーミング機能の提供を開始。2019年にはライブコマースをコア事業に位置づけると宣言した。同社は最近、スマートフォン向けアプリに大がかりなアップデートを施し、個々の商品説明の画面をすべてショート動画に置き換えたほどだ。
しかし業界の静かな再編が始まるなか、「販売総額に占めるライブコマースの割合を高めることは、もはや最優先の課題ではない」と、範氏は話す。
今後は競合するプラットフォームとは異なる魅力をユーザーに提供し、これまでに作り上げたライブコマースの基盤を強化することで、蘑菇街のユーザーのロイヤルティーや購入率(訳注:商品ページにアクセスしたユーザーが実際に注文する比率)を高めていく方針だ。
(財新記者:原瑞陽)
※原文の配信は10月16日
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