AI(人工知能)を利用した音声認識技術の開発を手がける中国のユニコーン企業の雲知声智能科技(ユニサウンド)は、2月18日、上海証券取引所に提出していた上場申請を取り下げた。翌2月19日の同取引所の情報開示で明らかになった。
ユニサウンドは2012年に創業。これまでに8ラウンドの資金調達を重ね、直近の企業評価額は12億ドル(約1266億円)と見積もられていた。2020年11月に上海証券取引所のハイテク企業向け新市場「科創板」へのIPO(新規株式上場)を申請し、9億1200万元(約148億円)を調達するもくろみだった。
それがなぜ、上場計画の撤回に追い込まれたのか。ユニサウンドは理由を公表していないが、市場関係者の間では、同社が実績を過大に見せかけていたとの疑惑が注目を集めている。
巨大IT企業との競争にも直面
音声認識はAI技術の主要なアプリケーションの1つだ。それだけに開発企業の競争は苛烈を極める。ユニサウンドは中国の科大訊飛(アイフライテック)やアメリカのニュアンス・コミュニケーションズなどの同業他社はもちろん、グーグル、アップル、アマゾンなど巨大IT企業との競争にも直面している。
そんななか、ユニサウンドはIPOの目論見書に、同社のAI音声認識サービスの市場シェアが「生活分野や医療分野で首位」であるとする外部の調査会社のデータを引用。具体的には白物家電向けのシェアが70%、音声カルテ記録システムが70%、カルテの品質管理システムが約30%だという。
ところが、この記述が思わぬ物議を醸した。2020年12月11日、ある投資家が深圳証券取引所の上場企業情報アプリ「互動易」を使い、ライバルのアイフライテックに一連の質問を送信した。
すると同社は、ユニサウンドの音声カルテ記録システムのシェアが70%というのは「事実とかけ離れて」おり、白物家電向けのシェア70%も「完全に事実に反する」と回答したのだ。
ただし、これはあくまでアプリ上で投資家の質問に答えたもの。アイフライテックは、具体的なデータの出所や調査方法などの詳細は明らかにしていない。
(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は2月20日
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