中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)のビジネスは、アメリカ政府の制裁により大きな打撃を受けている。なかでもスマートフォンに代表されるコンシューマー製品事業の落ち込みは深刻だ。そんななか、同事業のCEO(最高経営責任者)を務める余承東氏の職責を逆に拡大する人事が明らかになり、注目を集めている。
財新記者が1月27日にファーウェイの複数の関係者から得た情報によれば、余氏が同社のクラウド・AI(人工知能)部門のトップを兼務する人事がすでに発令された。前任者の候金龍氏はデジタルパワー事業の董事長(会長に相当)に異動した。
ファーウェイの主要事業は「キャリア・ネットワーク」、「エンタープライズ」、「コンシューマー」、「クラウド・AI」という4つのビジネスグループと、そこに「スマートカー・ソリューション」ビジネスユニットを加えた5部門で構成される。そのうちクラウド・AI部門は、クラウド・コンピューティング、サーバー、ストレージ、AI半導体などの事業を傘下に置く。
2020年11月、ファーウェイは車載機器事業を強化するため、余氏がスマートカー・ソリューション部門のトップを兼務すると発表した。さらに今回の人事で、余氏は主要5部門のうち3部門を同時に統括することになった。
ハードは黒字、サービスは赤字の難題
ファーウェイはアメリカ政府の制裁下で事業戦略の大転換を迫られており、クラウド・AI事業の強化を最重点項目として位置付けている。
余氏の年齢は51歳。1993年にファーウェイに入社し、同社が通信設備の「代理商」から高度な技術力を誇る世界最大級の通信機器メーカーに躍進する過程で、つねに最前線のリーダーとして活躍してきた。
なかでもスマホ事業を後発から世界のトップスリーに入るまでに育て上げた豪腕は、ファーウェイ社内で高い評価と人望を集めている。このため今回の人事について、余氏ならばクラウド・AI部門のビジネスをハードウェア主体からサービス主体に転換できると期待する社員が少なくない。
だが、それは決して容易な任務ではない。あるファーウェイの協力会社の関係者によれば、クラウド・AI部門には事業戦略をめぐる深刻な部内対立が存在する。サーバーなどハードの販売事業は黒字だが、クラウド・サービス事業は今もって赤字が続いているからだ。
「この難題を乗り越えて戦略転換を成し遂げられるか。余氏にとって大きな挑戦だ」と、この関係者は指摘した。
(財新記者:張而弛、覃敏)
※原文の配信は1月27日
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