「北欧は幸福度が高い」と思う人に教えたい真実 現状を正しく捉えるためのデータの読み方
さて、ヨーロッパの失業率に目を向けてみると、ある国で住民同士がどれほど強い結びつきをもっているか、住民がどれほど個人的に満足しているかなどを、失業率から推測するのはきわめて難しいことがわかる。
ヨーロッパで失業率がいちばん低いのはチェコで、2%と少し。一方、スペインは長年、失業率が高い状態に耐えていて、2013年には26%を超え、2019年後半になっても14%を超えている。その後、わずかに減少したものの、2019年には若者の約33%が失業状態にあった。スペインで就職活動をしている人がこの数字を見れば、暗澹たる気分になるだろう。
ところが、チェコの幸福度はスペインより8%高いだけだ。一方、チェコの自殺率は10万人当たり8人強で、スペインの3倍ほど高い。それでも、強盗事件はチェコのプラハよりスペインのバルセロナでよく起こっているのはたしかだ。
数字をどう受け止めるかは人それぞれ
ではスペインとイギリスを比較すると、どうなるだろうか。強盗事件の発生率を比べると、スペインのほうがイギリスよりわずかに高いだけだ。スペインの失業率はイギリスの4倍も高いというのに。
さあ、これでみなさんにもいくら失業率だけを見たところで、雇用や失業に関する複雑な現実は把握できないことがおわかりいただけたはずだ。
政府が公表する統計では失業者に含まれても、家族の支援や非公式労働のおかげでどうにか暮らしている人は多い。
それに統計上は完全な就業状態に当てはまるとしても、現状に不満がありながらも転職がむずかしかったりできなかったりする人も大勢いる。
たしかに、数字はウソをつかないだろう。でも、その数字をどう受けとめるかは、人それぞれというわけだ。
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