時短営業後に「困窮者へ無料弁当」飲食店の思い 「夜も暇になるし、1日6万円の協力金は多い」
例えば、扶養照会について言えば、このほど厚労省の通知が改められ、家族との音信不通の期間が「20年間」から「10年程度」に短縮されるなどした。しかし、路上生活者に情報は届いていない。
昨年こんなこともあった。
「“ばあちゃん”が新しくホームレスになった人を連れてきたことがあったんです。それで、10万円の特別定額給付金の話になって。後日、役所に確かめたら、住所が店でも受け取れると言うので、書類を送ってもらおうとしたんですが、肝心の本人と連絡がつかなくなっちゃった」
“公助”はないわけではない。ただ、市井の心意気や活動がなければ、当事者が利用までたどり着くのは難しい。
緊急事態宣言が明けたら…
めぐりやの活動を知り、食材などの寄付を申し出る人も増えている。店のツイッターを見た沖縄の人から毛布の提供があり、段ボール2枚で寝ていたホームレスの人に届けたこともあった。
「保管場所に制限もあるし、呼びかけはしていないんです。みんな自主的。コロナ禍で、いい事なんてまったくなかったけれど、『寄付文化』だけは根付いてほしいですね」(哲男さん)
緊急事態宣言は3月21日の期限で解除される見込み。飲食店の営業時間は当面、制限がかかるようだが、めぐりやの無料弁当も「完走」が見えてきた。
「顔がわかる人が増えたから、情が湧く。やめるという話はしていますが、悲しい顔をされます。毎日はできなくても不定期とか、できることはないかとは考えています」(哲男さん)
橋本さん一家が活動を続ける中で、何度も頭をよぎった言葉がある。
「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」(宮沢賢治)
「うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる」(相田みつを)
そうした世の中をつくる政治の働きが起こることにも期待しているという。
(編集部/園田昌也)
※この記事は「弁護士ドットコムニュース」で3月20日に公開されたものです。
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