45歳男性が語った「20年路上生活」の深刻理由 一度の失敗で親に家を追い出された
2011年、ホームレスに関する一つの論文が発表され、注目を浴びました。
タイトルは「東京都の一地区におけるホームレスの精神疾患有病率」(日本公衆衛生雑誌)。精神科医・森川すいめいさんら5名による論文です。
森川さんらは、2008年12月30日〜2009年1月4日に、JR池袋駅(東京都豊島区)半径1キロ圏内で路上生活を送る人を対象に調査を実施。協力を得られた80人のうち、62・5%にあたる50人が、精神疾患があると診断されました。
それまでも、ホームレスの中に精神疾患や障害、知的障害のある人がいることが支援者などを中心に指摘されてきましたが、この論文の発表を機に、改めて注目を集めるようになりました。
その後、ホームレスに陥った知的障害者のライフコースから、何が原因なのかを検討した研究。精神、知的障害のある人がホームレスとなった原因や、抜け出せない理由と障害の関係性を調査した研究など、障害とホームレスについて調査した論文の発表が続いています。
どのような経緯で、知的障害や精神障害のある人々がホームレスとなっているのでしょうか。実際にホームレス生活を送っていた障害のある方への取材や、支援者らの話を基に考えていきます。
一度の失敗で親に家を追い出されて路上生活へ
「父との思い出は、恨んでいることはあってもいい思い出はありません。(母親と)離婚してから、会いたいとも思いませんでした」
そう語るのは、なべさん(仮名)、45歳。精神障害があり、20年近く路上とカプセルホテルなどを行き来するホームレスでした。