45歳男性が語った「20年路上生活」の深刻理由 一度の失敗で親に家を追い出された
なべさんを例にとりましたが、これはなべさん固有の問題ではありません。障害がある人がホームレスとなるとき、家族という「資産」の問題は大変重要といいます。
精神疾患や障害のある人々を支援する「べてぶくろ」(東京都豊島区)。ここは、精神疾患のある方を対象としたグループホームも経営しています。べてぶくろのソーシャルワーカー・木村純一さんも、障害のあるホームレスと家族の問題についてこう語ります。
「生まれ育った家庭の苦労が大きいと思います。うちのグループホーム、路上(生活)を経由して入る方が多いんですが、その多くの方が家庭の中で何らかの虐待があったり、ネグレクトがあったり。そういった、家庭崩壊みたいなところからの人は多いんじゃないかなと思います。例えば、連休がある、正月があるといって、実家に帰る人ってほとんどいなくて。ホームで過ごす人が圧倒的に多いなと思いますね」
知的障害と精神障害では家族との関係が違う
また、障害者と家族の関係について、木村さんは私見と断りつつ印象を述べます。
「障害のことでいうと、知的障害というのは産まれながらの障害である中で、親が責任を感じて家族会というのがすごく強いんですね、昔から。精神障害はその逆で、家で散々親や家族に迷惑をかけて、追い出されることも。うちのグループホームでも、家族のやっている自営業の手伝いに出てもいたけれど、そこでもトラブルを起こし迷惑をかけて、勘当されてしまったという精神障害の方がいます。連絡先もわからないし、(知っていても)取りづらいという方も多いですね。家族の繋がりや、家族会というテーマで喋ると、そんな違いがあるんですよね」
長年貧困問題、ホームレス問題を研究してきた日本女子大学名誉教授・岩田正美さんも、家族の影響について言及します。
「路上に珍しく、知的障害のある女性がいたことはあるんですけど、その人は(障害)年金をお兄さんに使われてしまった。家族がいることが、かえって重しになってしまう人もいるのよ」
こちらは家族はいても、それが「資産」とならない。むしろ金銭という「資産」を奪われてしまう。そんなケースです。