時短営業後に「困窮者へ無料弁当」飲食店の思い 「夜も暇になるし、1日6万円の協力金は多い」
気軽に手にとれるよう、弁当は店の外。いたずら防止や弁当が冷めないよう、店をあとにする午後11時半ごろまで、弥寿子さんの夫でオーナーの保憲さん(68)が少しずつ外に並べていく。
提供が始まる午後9時半ごろになると、すでに遠くで待ち構えている人もいる。毎日のように来る「常連」もできた。
「少しずつ話すようになった人もいれば、最初から身の上話をしてくれた人もいます。見知った人が急に来なくなって、何かあったのかなと心配になることもあります」(保憲さん)
防寒具やカイロも一緒に提供
弁当のほか、地域住民が寄付した防寒具やカイロなども一緒に提供する。取材したときは、防寒具を選んでいた30~40代くらいの女性と出くわした。
「こっちのコートはどう? さっき着てみたけど暖かいよ」。保憲さんが試着を手伝う。人目を気にしてか、試着もせずに持って行き、翌朝返しに来る人もいるという。親しげに声をかけるのはそのためだ。
持ち帰るコートが決まると、女性は「ありがとうございます。助かります」と一礼して、足早に去って行った。50mほど行って、歩度をゆるめた女性の後ろ姿を見ながら保憲さんが言う。
「女性も多い。子ども服ももらわれていったから、小さな子ども連れもいるみたい。DVで夫から逃げて来たという人からお礼の手紙が届いたこともありました」
当初はホームレスの人を想定した取り組みだったが、続けるうちに若い女性や学生、求職中と思しき人たちなど、幅広い層が困窮していることが見えてきたという。